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芸術家「羽旨まぼる」のブログ

 芸術家としての羽旨まぼるの様子を御知らせ致します。芸術家「羽旨まぼる」の所属は「蛙音楽事務」です。

シンガーソングライター【はむねまぼる】新曲「唯我独尊」


ジオシティーズ蛙エンターテインメント

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  1. 2012/09/26(水) 21:39:14|
  2. 音楽活動
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小説「若芽の国」第12章_啼いた昆布_ボジェクゾシム・ペディグリン_ぼじぇくぞしむシェルティング

 私は、ボジェクゾシム。
昆布の妖精として生まれた。
父は、私達の家族には居無い。
母と、弟と姉の4張で暮らしている。
本当は5張で暮らすはずだけれど。
因みに、昆布は、私達の妖精の国では1張(いっちょう)、2張(にちょう)と数える。
そして隣国の若布の国では一枚、二枚と数える。
弟は本当に此処、1、2年前に生まれた。
とても小さい。
 私は、衝撃的な事を体験してしまった。
現代に置いて(おいて)人間は滅多に妖精の国へは来無い。
忙しいから。
心を亡くした状態ではとてもじゃないが、妖精の国へ何て来れ無い。
有る程度の時間と、有る程度の心の余裕が無いと、来る事が出来無い。
多くの人は、庭でハーブの匂いでも嗅いで居る間に知らぬ間に妖精の国に来ている事が多いらしい。
気分が良く成って辿り着くのだろう。
 しかし、私が合った人間はそうでは無かった。
とても、花の匂いを嗅いでいたら、気分が良くなって妖精の国に来て仕舞った何て雰囲気では無かった。
恐らく、其の人は一度黄泉の国や、三途の川に行った事が有る。
そんな雰囲気が漂(ただよ)っていた。

 彼の名前は、フルタマンミツだ。
彼は、良く分からないがとにかく間違って此処、昆布の国に来て仕舞った。
此の国に辿り着いて仕舞った。
其の過程は余りに難しくて私には今一理解しかねた。
しかし、兎に角(とにかく)此処、昆布の国に来てしまったのだ。
彼は、既に死んでいた。
死んだ後に魂だけが彷徨って(さまよって)此処に来てしまったらしい。
だって三途に川に行った事が有るのだから、其れはそうだろう。
 私は、畑作業をしにいつも通り、我が家の畑へ行った。
そしたら、其処に彼が居た。
私は其の頃、姉が東京に上京してしまった事に多少当惑していた。
だから何と無く、意識が遠く成っていた。
だから、其の人間はただの幻想だと思った。
と言うか、夢の国であり妖精の国である「昆布の国」にある全てはただの幻想だ。
まあ、幻想と言う物は現実に存在する物が変化したものだから、元の形は現実世界(人間世界)にちゃんと存在するのだが。
其の話は放って置いて。
私は余りに驚くべき其の状況に暫く一時停止してしまった。
ll のマークで有る。
そのくらい、昆布の国に人間が居る事は本当に珍しいのだ。

 最近夢の国では人間が紛れ込んだら、追い返せとか訳の解ら無い条例が出始めた。
昆布の国の妖精達はとても真面目だから、一度思い込むと徹底的だ。
もう、条例は法律に成って仕舞っている。
昆布の国の妖精は真面目と言うか、真面目過ぎる。
そんなわけの解ら無い条例も思い込んでしまえば最高の力を持つ法律に迄仕立て上げてしまう程真面目で、真面目腐っている。
腐っていると言うと少し言い過ぎなのでは無いかと思われるかも知れないけれど、事実真面目腐っているのだ。
 だから、私は彼を見て暫く仕手(して)途轍も無く身震いした。
「ヤバッ」と思ったのだ。
殺される!
とまででは無いが。
ヤバイのだ。
人間を妖精の国へ入れて仕舞うのはヤバいのだ。
 彼は我が家の畑(ニュートリション場)に刺さっているストローを眺めていた。
珍しそうに。
いや、私からするとそんなストローでは無く、貴方の方が珍しいのだ。
私の元に天使と悪魔が遣って来た。
此処は妖精の国なので、私の元には本当に悪魔と天使が遣って来た。
天使は天国から、悪魔は地獄から。
全く、仕事熱心で有る。
私のちょっとした心の揺れ迄感知して遣って来てくれるのだから。
 いやでも、此の場合はどうても良い事では無い。
何しろ昆布の国では人間を匿う(かくまう)事は重罪だ。
意味不明だが。
上(TOP5閣)がそう思い込んでいるのだからもう、其れは仕方が無い事だ。

 意外な事が在った。
天使は1人、悪魔が2人来た。
何故に悪魔が2人?
其れは、何故かと言うと、最近人間界の日本で自殺者が増えているからだ。
最近、悪魔が増えて、悪魔の仕事が増えている。
悪魔が大忙しなのだ。
其れから、死に神迄忙しそうにしている。
悪魔が死に神に嗾けて(けしかけて)もっと人間を自殺させろとか行ったらしい。
最近昆布の国のTVで見聞き仕た(した)。
 多分其んな理由で悪魔が2人来た。
そして、私は言い包められた。
悪魔に。
だって、其れは当然だろう。
天使1VS悪魔2だから当たり前だ。
 どの様な結論に成ったかと言うと、「匿う(かくまう)」だ。
其の人間を私が匿うと決めた。
私は変身の術を使って、彼を昆布の妖精に養成した。
別に、彼が私に変身させろと要請した訳では無い。
私は彼を一方的に昆布の国の妖精の姿に変えた。
 彼は喜んでいた。
私は彼をアパートに住まわせた。
そこらへんの手続きは私が済ませた。
其のアパートの大家の昆布さんに挨拶した。
言葉もしっかり教えた。
私は大家さんには、大変嘘臭い物語を物語った。
「彼は言葉が変なのですが、其れは此の人、あ、ううん、此の昆布の御父様とお母様が大変真面目で(昆布の国では真面目と言う言葉、最高の褒め言葉だ)、我が子、つまり此方の「マンミツ」さんにバイリンガルに成って欲しいと思ったのです。ワカメの国の言葉と昆布の国の言葉の両方を喋れる様にと。そうして、ワカメの国の言葉を熱心に慣わ(ならわ)せて、習わせていたら、昆布の国の言葉つまり母国語を覚えるのをすっかり忘れていて。それでちょっと言葉が変ですが、気にし無いで下さい。お金は、私が初めの内何ヶ月は払いに来ます。彼の仕事場はもう既に決まっています。ですから其の仕事が落ち着いて来たら、本人の御金で家賃を払えると思います。」
そんな事を一気に喋繰ったら(しゃべくったら)、大家さんはさすがに気圧された様で納得してくれた。
 彼(マンミツ)の職業を彼に宛がった(あてがった)のも私だ。
彼の仕事場は、塵(ごみ)消化場だ。
人間界から遣って来た塵(ごみ)を処理する、昆布の国の外に追い遣る仕事だ。
彼は、ふむふむと興味深そうにして、働き始めた。
軌道に乗って来た様だ。
 しかし、起こった。
あれが。
和昆戦争。
今から思えば、私の元に悪魔と天使が遣って来た、私が悪魔の言う通りにした事自体が、悪魔に取り憑かれたと言う事とイコールだったのだろう。
正か、真さか、まさか、あの、TOP五閣の一張の占い師が私の実の姉マコアお姉ちゃんだったとは。

 彼は一生懸命に働いていた。
私は、其の彼の働く様子が好きだった。
彼が好きなのでは無い。
彼の働くときの汗(海の中だから見えないが、小さな事は気にするな)が眩く(まばゆく)見えた。
彼が格好良く見えた。
いや、彼が好きとか沿う言うのでは…無いのだと思う。
彼が働いて居る姿が好きなのだ。
どうして私が彼が働いて居る場面を知っているかと言うと、気に成ってひっそり彼の職場にちょくちょく行っては物陰から見ていた。
 彼は生きがいを感じている様だった。
私も彼を匿(かくま)って、良かったと心から思えた。
そもそも、隠す必要も無いが昆布の国の妖精はちょっと頭が”アレ”だから仕方無い。

 私も姉が居ない日々に慣れていた。
そんな中、あの戦争が起こり始めた。
戦争が起こるという雰囲気は何処と無く在った。
何と無く心がざわつくので、解って仕舞う。
嫌だけれど。
分かって仕舞う。
どうし様も無く。
 テレビでは昆布の国の頭(TOP5閣)の訳の分からない政策がどんどんと発表されていった。
前にも増してドンドン意味の分からない方向へ昆布の国の政治は動いていった。
本当にどうし様も無い作る必要さえ無い制度を作り捲くっていた。
其の指示を出していたのは、実は「占い師」だ。
最近お役交代が有った、占い師だ。
此の占い師という役職は、名前を明かす事は基本的に無い。
だから、私も勿論其の新米(新枚?)昆布の本名は知らなかった。
飽く迄も、「占い師」は「占い師」なのだ。
 それが、戦争が始まるちょっと前にその占い師の名前を私は知った。
多分、一生懸命に其の新米占い師の名前を調べようと思っていたら、探し当てられただろう。
でも、私は其処迄(そこまで)その占い師に興味が無かった。
彼女が出す訳の分からない指示で困る事は殆ど(ほとんど)無かった。
有っても無くても良い様な制度ばかりだったから。
でも、偶々知ってしまった。
彼女の名を。
私は其の占い師が彼、なのか、彼女なのかさえ知らなかった。
彼女の名前は「マコア」。
何ヶ月か前に上京した、私の実の姉だった。

 別に其の占い師が私の姉だからって全然、動揺なんてし……する!!!
どんだけだよ!
実の姉って!
信じられない。
だって、お姉ちゃんは、会計事務所で働いていたのでは無いのか!
どうなっているのだ。
私と私の母で少し話し合った。
 でも、その「姉が国のお偉いさんまでいつの間にか上り詰めている」事件よりも、ワカメの国との戦争の方が大変だった。私が住んでいる所は田舎だから、徴兵はされなかった。
妖精の国では、現実世界と違って徴兵と言ったら、男も女も徴兵される。
元々、妖精にとっての「男、女」なんて大して変わらないどうでも良い違いなのだ。
私ももうすこし都会側に住んでいたら徴兵されただろう。
でも、ここは余りにも田舎で徴兵の対象に成らなかった。
お役人が此処まで来るのが面倒なのだろう。
 マンミツの事が問題だった。
私が庇(かば)った人間、フルタマンミツ。
彼が住んでいるアパートに徴兵のお達しが来た。
 私は彼のアパートへ言って、大家さんに話をした。
またまた、私が適当に造った作り話を。
「彼の御父さんと御母さんは、ああ、そうです、死んだのですが、彼らはワカメの国の事を大変大事に思っていました。だから、絶対に戦争を出来ない立場にマンミツさんは居るのです。だから、彼はおじいちゃんと御婆ちゃんんの所へ戦争の間預けられる事に成ったのです。」
とか、そんな話だ。
何とか辻褄がギリギリ合った。
良かった。
ぎりぎりセーフ。
そんなこんなで、フルタマンミツさんは其のアパートも出て職場も退職した。
 退職したは良いけれど、マンミツさんにはこの先行く宛てが無い。
どうしたものか、私の家に連れていくと言っても、私のお母さんが許してくれるか。
御母さん、固いから。
年取ってるし。
堅いから。
たぶん許してくれない。

お姉ちゃんは闇の一味に成ってる(今、じゃお国の役人は全員悪人扱いだ。悪魔にでも憑かれて居るのでは無いか?)し、
マンミツさんの行き場が無いし、
仲良しだったワカメの国となぜか戦争をしなければならないし…。
田舎に住んでいる私にには何も出来無い。
甲斐性が無い、私には何も出来ない。
力の無い私には、何も出来無い。
不甲斐無い。
こんな状況嫌、!
※エンディングテーマ曲「ふがいないや/YUKI/蔦谷好位置」で御願い仕舞す。
こうなったら、もっと盛大な嘘を付くしか無い!
私は決意した。

 私は、駆け落ちする。
駆け落ち…。
好き合う者同士が別の場所へと突然旅立つ事。
しかして私はマンミツさんに恋をしているのか?
どちらかと言うと母性愛に近いか若(も)知れ無い(しれない)。
マンミツさんにアパートを宛がい(あてがい)、マンミツさんの職場を紹介し、マンミツさんの正体がばれぬ様にアパートの大家さんに嘘を付いたりと、私はマンミツさんの為に自棄(やけ)に奮闘している。
何故?
恋か?
恋なのか若(も)知れ無い。
恋なのかもしれない、何て微妙な言い方普通はし無い。
でも、私の場合は其の位(くらい)薄い感情だった。
まるでプラスチックの様な恋だ。
堅くて、衝撃で割れて仕舞う(しまう)。
そんな…恋。
果たして本当に此の感情が恋なのだろうか。
恋と一言に言っても、その内容は様々だ。
 大嘘…。
私の盛大な、決して正大では無い嘘。
正しく無い、口から出る虚。
口虚。
嘘。
私は、私の周りの御堅い(おかたい)連中達(昆布の国の妖精は私の母も含めてみんな皆、考え方が堅い)に
口から出る矢で対抗する事にした。
―と言うか、そもそも人間を妖精の国に居させる事を禁止する意味が解ら無い(わからない)。
正直言って、意味不明だ。
若布語で言うと、「訳若布(わけわかめ)」だ。

 「私ね、恋をしてしまったの。御母さんだから、私は駆け落ちをするわ!どうか私の後を追わ無い(ない)で頂戴(ちょうだい)!」
私は決死の覚悟でそう母に言った。
私は、物凄い色々考えて、其の結果こうしてちゃんと自分の口から言ったのだ。
…其れなのに、母は芽をあ、違う、(人間の言葉の日本語に直すと…)「目」を大きく開けたまま私を暫く(しばらく)の間凝視した。
そして
「はははははははははははははははははははは」
笑った。
「アンタね、駆け落ちするのに、親に報告する張(はり〈昆布の国では昆布の妖精を1張、2張と数える。〉)が居る藻の(もの〈昆布の国と若芽の国では、「者」を「藻の」と表記する〉)ですか!はははははははわははははははは」
暫く笑って、母は続けてこう言った。
「あああ笑った笑った。久し振りに笑った。昆布の国は考え方が堅いからね」
あ、母もそう思ってたんだ。母も十分考え方が堅い方だと思うけれど…。
「そっか、そっか、恋をしたんだね。うん。…。いってらっさい!其の張(はり)と行っちゃいな!と言うか、別の国に行きなネ。此れから多分、昆布の国は若芽の国に戦争を仕掛ける。何だか周りの様子が可笑しい(オカシイ)もの。
だから、昆布の国と若芽の国以外の所に行きな。
お勧め(おすすめ)は竜宮かな?亜其処(あそこ)は良い所だからさ」
母はそう言って、私に卵パンを渡した。
そうして、私は母に嘘を付く事に成功した。
馬鹿だね。
御母さん。
私は駆け落ちの意味何て、知ってるよ。
其れを敢えて(あえて)言ったのは、私の好きな人が、人間だからだよ。
御母さん、騙されてくれて有難う。

 「マンミツさん、待たせたね。じゃあ、行こう」
私達は待ち合わせの珊瑚が生えている苔だらけの石の前で落ち合った。
勿論、マンミツさんが私を好きかどうか何て(なんて)解ら無い(わからない)。
でも、良いのだ。其れでもいいのだ。
私はマンミツさんの世話焼き女房として、世話焼きのマザーとして、マンミツさんを守る事が出来れば、其(そ)れで良いのだ。

 私が知っている「若芽の国」と「昆布の国」以外の夢の国と言ったら…
そう、母の行った通り竜宮城が良いかも知れ無い。でも、あそこ一時期人間界の日本流行って人間の出入りが激しかったから、有頂天になっていて、天狗も住んでるし…。
私、天狗は苦手なんだよね…。
だから、そう、あそこが良いよ。
黄泉の国。
あそこなら、なんだか陰気だけれど安心感は抜群だ!
そう私は決めてマンミツさんに言った。
「じゃあ、行きましょう!」
「え、何所に」
「ひみつ」

 幼い頃、長無い頃、私は姉とよく遊んだ。
姉妹や兄弟は喧嘩(けんか)をよくすると言うが、私達姉妹はよく遊んだ。
マコアお姉ちゃんと、妹のボジェク。
よく遊んだ。
 マコア姉ちゃんも恋をする時期に成った。
そして、私は彼女と遊ぶ事が少なく成った。
何でも、今付き合っている彼氏にメロメロで妹と遊ぶ余裕等無いのだと言う。
其処迄(そこまで)はっきり言い渡されても困るが…。
 しかし、其う言う風にはっきりと言って終って(しまって)も後で本当に姉妹の関係が永遠に失われる事が無いと言う確信を持って居たからこそ、「『今は』遊べない」と言えたのだろう。
姉の「恋人(恋張)が居るから遊べない」宣言の一連の事件は、
逆に言うと私達の姉妹の絆を肯定する出来事だった。

 そんな「恋相手が居るから、妹とは遊べない期間」の間に、姉から遊びに行こう、と言うか散歩に行こうと言われた。
何だろうと思って、私は姉に付(つ)いて行った。
暫く歩んで、其れから、着いたのは街を一望出来る公園。
其処に着くや否(いな)や、姉は叫んだ。
「あああああああああほおおおおおおおおお。ばあああああああかああああああああ。」
ん?
何だ此のシチュエーション…。
何が起きている?
そう行った後、ふらふらと身体を揺らしながら、風に吹かれて飛んで行って仕舞い(しまい)そうだった。
が、此処は昆布の国だから風は無い。
代わりと言っちゃあ何だが、水の流れなら在る。
そして彼女(姉)はフラフラと足を縺(もつ)れさせた後、鉄筋の手擦り(てすり)に腰を預(あず)けた。
そして大きく。
「はあ」
と溜息を水中に突いて、
「振られちゃった」
と一言。

 そして姉は私にこう言った。
「アンタ、私の青い首飾り欲しいって言っていたよね。上(あ)げるよ。ほい。」
姉は、水中に其の青い首飾りを投げた。
空気中では無いから地面に落ちたりはし無い。
例え落ちても、地面は海の砂だから、玉が割れたりはし無い。
私はふよふよとコチラに流れて来る葵首飾りを手にキャッチした。
此れは、姉と私が以前丘の上で遊んでいるときに、見つけた物だ。
姉が先に見つけたので、私の物だ!と言い張った。
其の青い首飾りには不思議な模様が描かれていた。
其れが、非鉱石の飛行石だとは其の時は未だ知らなかった。

 私は、姉が渾身(こんしん)の思いを込めたその「石」、「意思」、青い石を貰ったまま暮らしていた。
そのうちに、姉が昆布の都市へ出稼ぎに行き、其の出稼ぎ先で大成功を収めた。
そして、その大成功は成功を通り過ぎて最早(もはや)遣り過ぎで、国の政治を訳の解らない方向へと指示している。
 まだ、あの時の恋を引きずっているのだ。
私には分かった。
あのとき、姉のマコアが恋に敗れて、田舎の物見高(ものみだか)でフラフラに成って
もう人生がお仕舞いみたいな雰囲気を漂わせていた。
其のときから、彼女は少々投げやりなのだ。
そのままの意味だ。
投げやりなのだ。
その彼女の性格はそのままなのだ。
現在、国を指一本で左右できる位置「国専属の占い師」に成った今でもだ。
 もしかすると、自分でも「はっこれって遣ったら何か面白い事に成るかな?」とか適当に国策を練っているのだ。
この私の元に有る、青い首飾りを私に寄越した其のときから。
マコアお姉ちゃんは「変」なのだ。
crazyなのだ。

 結局、あの青い首飾りは特別な力を持っていて、私達を救ってくれた。
私と、彼(マンミツさん)は先ず、「三途の川」へ向かった。
其の後、三途の川の「三方向」のどこへも向かわ無かった。
三途の川はただ単に、通過点として通っただけだ。
 私達が向かったのは、黄泉の国だ。
マンミツさんは日本人だそうだ。
日本人は世界中で最も「陰」の雰囲気に強い部族だ。
滅びの美。
日本人は、侘び寂びを感じ様と思えば、何時でも感じられる。
 その日本人の基礎能力は、日本人が思うよりも素晴らしい能力だ。
「陰」の雰囲気に強い。
免疫が有る。
私はそんな所迄考えて、私と満密さんの行き先を「黄泉の国」に選んだのだ。

 私と古田満密さんの1張と1人は、黄泉の国に行った。
…物凄かった。
忙しい。忙しい。
デビル、悪魔、豚、皆皆忙しそうにして居た。
デビル、悪魔、死に神はノイローゼに成っていた。
働き過ぎだった。
だって、聞く所に拠ると人間界の日本の自殺者数が物凄い多いらしいのだ。
 これは「死に神」と言う神様の仕業だ。
この「死に神」と言う神様は人間を「死なせたくする」と言う特殊能力を持って居る。
関わると、死ぬという世にも恐ろしい怪異だ。
 此の怪異が、黄泉の国で大忙しだった。
黄泉の国の仕事は「終わらせる事」だ。
生きている物を、生きている者を死なせて上げると言う役目を持った怪異達が住んで働いて居る国だ。
 日本人である「古田満密」さんなら、此の黄泉の国の「陰気」さに絶えられると思った。
結果から言えば、耐えられた。
ううん。
「古田満密」と言う青年はどうにもこうにも、逆境に強い気がする。
私が老婆心を働かせる事を必要としていない。
そういった雰囲気が彼の周りには流れている。
本当に1人でも生きて居られるだろう。
そう思わせる気迫が彼には有った。

「ここ、来た事が有る」

彼は言った。


 そのとき!
あたりで何だか嫌な予感がした。
私は姉程では無いが一応妖精だ。
魔法くらいちょろっとは使える。
 目に見えない何かが近くに居る事を知覚する事位出来る。
何か「陰」の性質を持った怪異が私達に悪意を向けている。
殺気と表現してもさして良い過ぎでは無い。
 満密さんも気が付いた様だ。
其のとき!襲って来た!何か黒い物達が。
悪魔が、デビルが、死に神が。
世にも恐ろしい光景が其処には在った。
最低の陰の塊である「デビル」「悪魔」「死神様」に一遍に襲われたのである。
私は叫んだ。
昆布語で、「たすけてぇぇぇ」。
古田満密さんも叫んだ
「助けてぇぇぇ」!

其のとき、何かが光った。
私が持っていた鞄。
母の計らいで持たされた鞄。
鞄の中に何か光った。
青く光り始めた。
そして、私と古田満密さんは手を繋いだ。
すると、身体が浮き始めた。

飛行し始めた。
ああ、解った。
私は此の時点で始めて解った。
これは飛行石だ。
人間界の洞窟で彫れると言う飛行石だ。
友達の昆布に聞いた事が在る。
何か特別な呪文を口にすると、特別な何かが起きるって。
きっと、私の昆布語と満密さんの日本語が混ざって、其の何かの呪文の発音に似通ってしまったのだろう。
そして此の飛行石は呪文に反応した。
いわば誤動作だ。

その昔。、ラピュタ族という人間が居た。
そのラピュタ族は科学を使って、飛行石を結晶にし空に浮かぶ事が出来る島をいくつも空中に所有していた。
昆布の国の図書館で読んだ。
此の位の事は、妖精の国、夢の国である、昆布の妖精なら知っていて当たり前だ。
ただ、この石が其の石だとは本当に今迄気が付かなかった。
姉と綺麗だからって取り合いに成って、負けて、暫く姉が持っていて、其の後、姉が失恋して、こんなものやるよ!って私にくれた。
 その青い石が今光って、私達を浮かせている。
どんどん高く上っていく。
空を上る。
ある程度上空迄きたら、夢の国を抜けて、現実世界に来ていた。
弓状列島が良く見える。
私達はどんどん登っていった。
途中、変な形をした小さなロケットを見かけたりしながら、昇っていった。
 そして辿り着いた。
天に。


 私達は空に着いた。
私達はそこで観光をする事にした。
先ずは神様にご挨拶をしに行って、
其れから、
「天国」にも行った。
「極楽浄土」にも行った。
単なる「浄土」にも行った。
天使とか、キューピッドとかがうろちょろしていた。
なんだか少々暇そうだ。
 黄泉の国はデビル、死に神、悪魔が物凄い勢いで働いていた。
ノイローゼに成りそうだった。
と言うか、結果から言えば、悪魔、血苦味、デビルはノイローゼに成って、
昆布の国の妖精に取り憑いてストレス発散の為に、「ワカメの国」との戦争「和昆戦争」を勃発させたり、遣りたい放題だった。其の頃にはどうやら「和昆戦争」が始まったというという事が分かった。
私だって一応、昆布の国の民だ。直感で解る。
私は古田満密さんと天の国をお散歩していたが、夢の世界では「ワカメの国」対「昆布の国」が始まっていた。
 私は返らない。
戦争なんかに加担したく無い。
だから、私と満密さんは観光を続けた。
花畑も在った。
綺麗な蓮の花も有った。
 マイナーな所で言うと、「たまごっち」の天使っちも飛んでいた。
羽をパタパタと動かしながら。
丸型蛍光灯の様な物が頭に浮いている天使も居た。
  1. 2012/09/10(月) 23:51:28|
  2. ワカメの国
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小説「若芽の国」第11章_学ぶ若芽_ドグナ・ミラン・ディクドトリ

 僕の名前は、ドグナ・ミラン・ディクドトリ。
ワカメの国の大学生になったが、まだ、何をするか決まっておらず
なんとなく学校の授業には出て、日々を過ごしていた。
そのうち、そういった日々がだんだんと変わってきて、僕は自分の部屋に閉じこもって一日を過ごしたり、ふと調べたいことが頭をよぎり図書館に足を傾けるといった行動をする日々になっていった――

ディクドトリはコンブの国について調べていた。
国の組織に少し疑問を感じていたのだ。
政府に関することについての本を片っ端から読んでいった。
図書館で本を借りて、読んだ。
国のトップ五人集についてはコンブの国の人なら誰でも知っている。
小学校で習うことだし、大体の場合は政府=五閣の事w意味している。
僕は、その五人集1人1人について詳しく調べていった。
…まあ、なんと言っても五人集の中で最も怪しいのは占い師のマコアだ。
誰がどう見ても、明らかに彼女が怪しい。
あの人はたまにテレビに出るが、まるで「私は怪しい人ですよ」とでも言いたげな服装をしている。
一体どういう人なのだろうか。
僕はモヨリについて調べ始めた。
でもその人に関しての文書はなかなか見つからなかった。
どうしても見つからず、手をこまねいていたが、少しだけ彼女に関して記してある記事を見つけた。
それは占いの本だった。
コラムの特別インタビューで彼女は語っていた。
僕はいったいどうしてもっと早くにこの雑誌の事を思い出さなかったのだろうか。
有名な占いの雑誌なのに。
姉が読んでいたその雑誌がリビングに置いてあるのを手に取りパラパラっと何の気なしに
めくっていたら、偶然に見つけたのだ。
見出しはこうだった。
「トップ五人集の1人『国』をも占える程の強力な力保持しているモヨリが語る!!占い師になるには」
やけに長い見出しで、僕は見出しとしてはかなり駄目な方だなと思った。
やっとこさ見つけられた彼女に関しての文章だったが、そのインタビューの会話文には僕の望んでいる情報は無かった。
彼女は、なんだか訳の分からない魔術だの、占いだのについてを、専門用語を使ってとても分かりにくく語っており、
たぶんインタビュアーの人も理解できていない。
僕も理解できなかった。
モヨリの事に関して調べるのに一生懸命で、彼女の職業の占いについてはまだノータッチだった。その後それら専門用語について調べたがやはり、僕の欲しい情報ではなかった。

猛勉強している内に、
僕はある魔法にたどり着いてしまった。
恐らくそれは最も強力な魔法。「虚無の魔法」だった。
つまり虚無感のことだ。
この魔法は相手に虚無感を感じさせるという魔法だ。
物凄く強力で、防ぎ方がない。
なにしろその魔法の正体は名のとおり「無」なのだ。
ないのだ。
存在しないのだ。
存在しないものが自分に向かって襲いかかってきたとして、どうして避けることができようか。
いやできるはずはない。
その魔法にかかれば、この世に存在する物、感情、思想、考え等なんでもかんでも「無」にされてしまう。忘れてしまう。
その虚無に関しての魔法を知ったときに1つ思い出したことがあった。
小学校の時に習ったが人間界の日本には仏教があり、
成仏という言葉があるのだそうだ。
虚無感とはその「成仏」というものに似ていると僕は思った。
なんとなく、マイナスのイメージだ。
そのとき習った記憶によれば、成仏とは「気持ちを仏という存在にに変化させる「居というもの。
言ってみればこの世のものではなくなるということだ。
しかし、「虚無」と「成仏」とではちょっと違うらしい。
やはり、成仏というのは「仏」という「有る」存在に「成る」ということ。
一方「虚無」は、特に何にも成らず、あくまでただ単に「無くなる」ということ。
成仏とはよく考えてみれば、ある存在を無にしてしまう行為ではなく、仏という、「有る」存在に変えるという、言い換えるのであれば無の魔法ではなく、有の魔法であった。
虚無の魔法とは似ているというより、むしろ逆の性質を持っていた。

今まで全然知らなかった。「無」の魔法を。
こんなに重大なことをよくも今まで知らずに生きてこられたものだと思ってしまう。
しかし、「無」の魔法の正体は結局の所、「無」だ。だから知らなくっても生きていけるというのは確かにその通りだ。無いものを知る必要は無い。
 さらに調べてみると、ワカメの国の隣の国、コンブの国がその「無」の魔法にとても強いらしい。そして国民は普段からこの魔法を多用しているらしい。
コンブは芯が強いのだ。
だから無の魔法に耐えられるらしい。
もしもコンブの国で使われている回数、の無の魔法がワカメの国で毎日のように使われていたら、国が持たないと思う。
ワカメの国だけに、あっという間に海の藻屑と化すだろう。

それはそれでいいのだが、そんな強力な魔法であるところの「無」をもしもコンブの国がワカメの国に対して使ってしまったら、一体どういう事になるだろうか。考えるだけでも恐ろしい。ワカメの国に対して敵対心があるのかどうかわからないが、ちょっとした表紙に間違えてひょいと使ってしまったら、それはそれは大変なことになる。きっとそこら中無いものだらけになるだろう…。結果的に僕のその考えはかなり甘いものだったが、そのときは後でこんな出来事があるなんて知る由もなかったのだ。
新聞には1面にデカデカとワカメの国の女王の顔が載っており、「女王、行方不明」とあった。僕はかなり驚いた。
僕は城へ向かった。

それから、事件現場のあたりのレンガが不自然に消えている。城の痕跡からして、女王はちょうど僕が最近調べていた「無」の魔法にかけられたらしい。となると、やはり事件はコンブの国のやつらがこの城へ忍び込み、そして女王に無の魔法をかけた。
だがどうやって城に進入したかだ。それなりに警備員が居るだろうし、スパイが簡単に進入できるような城ではあるまい。大体城は生き物のようになっている。ワカメの民以外は入れない。コンブの国のやつらが入ったら、絶対に城自体が拒絶反応を起こして外に吐き出すから入れるはずが無い。
一体、どのようにしてやつらがワカメの国に忍び込み、女王に魔法をかけたのか分からない。
まあどちらにしても、結局のところ、コンブの国はワカメの国に対して、敵対心があったのだった。
間違えて無の魔法を使っちゃっただなんてそんな甘っちょるいものではなかったのだ。
誤って国全体に対してかけたのではなく、女王個人に対して、水準を定め、正確に魔法攻撃しかけてきたのだ。これはどう考えても敵意があるとしか考えられない。
ワカメの国の城だってそんなに警備が甘いわけではない。
それから思ったのだが、女王はコンブの国に拉致されたのではない。
コンブの国のやつらが女王に無の魔法をかけたとするならば、女王はきっと虚無的な考えに陥り、虚無的な行動に移る筈。
きっと女王はやけになって、自分自身をどこか適当な世界へ飛ばしてしまったと思う。
恐らく人間界。
新聞では単に行方不明になったとしか書かれていないが、恐らく今女王は人間界に居るだろう。
きっとコンブの国のやつらもそのことに気が付いていると思う。
恐らくコンブの国のやつらは、ワカメの国の民が性質上無の魔法に弱い事をよく知っていてそれを使って女王をどうにかしてしまおうと考えたんだ。
でも、どうして?コンブの国はワカメの国に戦争を仕掛けるつもりなのか?
もしその通りだとするならば、今女王が現にいなくなってしまって、国の魔力はかなり弱まっている。やつらの思う壺である。
夢の国の1つ、ワカメの国からは特別な測定魔法を使わなければ見えない、一種の電磁はのようなものが発せられている。その電磁波は言い換えるなら魔力そのもの、魔力が微弱ながら外に向かって発せられているのだ。
先ほど僕はその測定魔法でその電磁波を測定してみたが、かなり弱まっていた。
夢の国にとって、この電波は国力そのものだ。魔力が強ければ強いほど、その国のが強いことを指している。夢の国にとって、魔力は存在そのもの。魔力が0になれば、国は消滅してしまう。グノーシス的思想で考えるならば夢の国は人間の世界と違って、物・霊で分かれてはいない。夢の国は霊でしかない。人間がこちらに来ていた時代は、彼ら人間にはワカメという物体、や家等が見えていたかもしれないが、それは、彼らが夢の国を理解するために、自分自身に見せている「記号」に過ぎない。実際にはワカメの国には彼らには理解できない事、物が沢山ある。ワカメの国ではよく聞かれる話だが、人間がこちらにちょくちょく来ていた時代、彼らは私達が見ている物をあたかもそこにないかのような目をしていることがあったと。彼らにとって理解できないものは、彼らはそれを透けて通ってしまうのだったらしい。
たとえば、僕のおじいちゃんは人間界にお友達がいるらしいが(けっこう最近の事らしい)、その人間のお友達とワカメの国の街中を歩いているときに、その人だけよく「物」を通り抜けたのだという。しかもそれには本人は全く気がついていない様子だったらしい。
 つまり、彼らは、自分に理解できるものしか見ない傾向があるらしい。
研究によると、ワカメの国に来れる人は、それでも自分に理解できない事も見る能力が高いらしいが、それでもワカメの国の民にとっては、かなり劣っている…というか、見えていないものが多いらしい。僕が思うにきっと僕が人間界に行っても僕に理解できないものはあるとは思うのだが…。


 其の変身ドリンクを飲んで魚の姿に成り、僕は竜宮城へ向かった。
和布の姿では速く泳げない。
妖精がドラえもんの道具を使って魚の姿に成った。
と言うか僕だった。
 竜宮上に着いた。
竜宮の周りには竜宮の使いがウロチョロしている。
守衛の役割を負って居る「リュウグウノツカイ」だ。
 どうしよう、この先、何も考えずに着てしまった。
僕の魔力では守衛を巻い(まい)て宮中に入る事は出来そうに無い。
困った。困った。相当困った。どうしましょったらどうしましょ。
 閃いた。
と言うか鰭(ひれ)がというか、手が何かに当たった。
ワカメの国の中のドグナ家のディクドトリの部屋、詰まり自分の部屋で飲んだ「変身ドリンク」を持って来て居た。
「即行動!」を座右の銘にしていた為か、最近の僕は猪突猛進気味である。
其の猪突猛進さが功を奏した様だ。
僕は学ぶ。
勉強する。
が、何でも知っている訳では無い。
知っている事だけ。
 僕は頭が切れる。
しかし其れは勉強をした事を元にして考えるから、閃くのだ。
僕が今回閃いた内容は、「竜宮の遣い」の姿をして、竜宮中(りゅうきゅうちゅう)に入るという事だ。

 変身ドリンク、体内に注入!
ごくごく。
竜宮のツカイ、竜宮の使い、リュウグウノツカイ…。
竜宮の遣いの姿を頭の中に一生懸命に思い浮かべた。
竜宮の使いの姿を頭に思い浮かべる事は簡単だった。
何故所以(なぜなら)先程見たばかりだからだ。
  1. 2012/09/10(月) 23:48:19|
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小説「若芽の国」第9章_正し過ぎた人_畑広美_ひろみクエスト

 ―夫が鬱になった。
私は、いつもの生活を送っていたのだった。
その「いつもの生活」というのは、職場に行って仕事をして、家に帰ってきて家事をするということ。
それが私の「いつもの生活」だった。
私の仕事は中学校の先生だった。
一昔前は学校の先生というと、うつ病になってしまうとかでものすごく大変だったらしいけれど、最近では楽な仕事に変わっていた。
仕事があるので私だけの力では家事をやりきれない。だから夫にも大分手伝ってもらっていた。
 一方夫はというと、会社へ行って仕事をして、それから私から頼まれた家事もがんばっていた。家事を頑張ってもらっていた。
そして夫はうつ病になってしまった。
もしかしたら、私が家事をサボり過ぎていたのかもしれなかった。
それで夫に負担がかかっていたのかもしれない。
かれは真面目だから、一生懸命両立しようとしてくれていたのだと思う。
私が日々を繰り返すことにあまりにも真面目になっていたのかもしれない。
私は彼の兆候に気付けなかった。
仕事は楽とはいえど、それなりには忙しかったから。
でも、今思えば、本当に重症だったのは夫より私の方だった。
私は心を亡くしていた。
私は忙しかった。

ある日私が夕ご飯を作っているときに、夫が私の所に来て、私に抱きついてきた。
料理しにくいし、危なかったけれど、夫はそうでもしないと不安なのだろう。
 夫は家にいるさなか
私はいつもどおりに勤務先の中学校へと車を走らせた。
病院へ一度行ってこれからのカウンセリングの事や薬のことについて聞いてきた。
それで今日は私は仕事へ着た。
そして、いつもどおりに着いた。
いつもどおりの所に駐車して、荷物を持って車を出て…バタンとドアを閉める。
そこまでは本当にいつもどおりだった。
私は職員室の方を向き、それで……私は、固まった。
私は―固まってしまった……?
動けない。
どうにもこうにも体が動かない。
私は困った。
だって、私はこの後職員室へ行かないといけないのだから。
でも私は固まったままだ。
よく見ると、動いていないのは私だけではない。
風もなく、なぜか時間が流れているという感覚が無い。
いつまで経っても…ずっと…永遠に…?
私はなぜか、この状態が一生続くように思えた。
きっとずっとそのままなのだ。
私はこのまま。
何も変わらない。
ここへは誰一人来ないし、時間もまったくもって進まない。
もう何年経ったのかな?そんな事が浮かんだ。
いやそんなに何年も経っているはずはない。
でもそんな風に思えてしまう程なぜか「永遠」に思えた。
太陽はずっと同じ位置にある。
しばらくすると(時間は進んでいないようだが)、この動かない世界に1つだけ動きだした物があることに気がついた。
風だ。
風で草が「ささっ、すさっ」と揺さぶられている。
少しだけ時間が流れているという感覚があって、安心した。
不意に私の視界の中で変な動きをするものが現れた。
物陰から、何かが出てきた。
私は、それが何なのか目を見開いて注視した。
もっとも、今の私は動けないので、目を本当に見開けているのかは疑問だったけれど、
気持ちとしては脳から目の瞼の筋肉に対して「開きなさい」と命令しておいた。
それは…ワカメだった。
可笑(おか)しな動きをする変な物体、其れはわかめだった。
私は朝、あの駐車場でワカメに引っ張られて此方(こちら)の夢の国、ワカメの国に来た。
グイと引っ張られた。
胸倉(むなぐら)をグイっと引っ張られた。
私の頭の中はぐるぐると回った。
強引に引っ張られて回る私は抵抗等(など)出来無かった。
ましてや先程迄 (まで)、駐車場で長い間突(つ)っ立って居たのだ。
私は引っ張られながら、此(こ)の儘(まま)引っ張られ続けて、何処(どこ)か遠くへ行って仕舞う気がした。
そして、此(こ)んなに速いスピードで、真っ直ぐ進んで仕舞っては、帰り道が分から無く成るのでは無いか?
と思って凄く不安に思った。


あんな訳の分からない世界に1人で行けば、
誰だって、不安になるのが当然だと思う。
でも私の場合はむしろ逆だった。
私はワカメの国にいるときの方が安心できた。
私って、自分が思っていた以上に人間界での生活を嫌だと思っていたらしかった。
ワカメの国に行ってその事に気がついた。
事務所の皆がワイワイやっていた所を見ていたら、なんだかとても安心することができた。
心からそう思えた。


私は、2人のワカメの事を、ファミリーコンピュータのゲーム「パックン」に出て来る敵キャラクターの様に感じた。肌が触れてしまえばゲームオーバー。ん?でも、此(こ)の場合はゲームオーバーに成るとどう成る?
今から思えばの話だが、私は、ワカメの国でゲームオーバーに成る事を恐れて居た。と言う事は、私は、人間界に戻る事を恐れて居た。まだ遊んで居たいと言うよりも、心の底から、恐れて居た。私は、自分で思って居たよりも、人間界での生活を苦しんで居たのだった。


【初仕事】
迷い子案内所の仕事場は24畳程度の広さだ。
部屋の周りに机が、中央を向く形で並んでいる。
とても、変な机の配置だ。
壁にはぎっしりと、長い時間を感じさせる茶色の棚がずらっと並んでいる。
棚が壁でもある。
そして、真ん中には、何も無い。
朝、仕事場はざわざわしている。
壁代わりの棚から紙を取り出したり、話し合っていたり、忙しそうだ。
私は、フランジェリムさんの机の付近の壁に引っ付いていた。
そうしていないと、邪魔になってしまう。
私が、あたりを忙しそうにしているワカメさん達を見ていると、
部屋の中央にあるワカメさんがやってきた。
そのワカメさんは紙を床に落とした。
故意に落としたように見えた。
その落ちた紙は、消えた。
すると、その紙が消えたあたりの床がなにやら青白く光って見えてきた。

何なのかと目を細めてみていると、
「じゃあ、行くわね、用意して」
とフランジェリムさんが声をかけて来た。
「あ、ごめん、用意って言ってもなんも持ってないもんね。じゃあ行きましょう」
「はい」
はて、どこに行くのかな。
フランジェリムさんが部屋の中心へ向かっていく。
私は、部屋の中心へ目をやった。
部屋の中心には霧がかかっていた。
さっきの青い光はどういう事になったのかなと思った。

 私は、その靄の中に入っていった。
私にはそれが夢なのか、どうかよくわからなかったけれど、フランジェリムさんがそう言っていた。
ていうか、フランジェリムさんはずっと紙を見ている。
そんなに難しいのだろうか。
すごく難しそうな顔をしている。
私は、フランジェリムさんのどの部分をみて、彼女が難しそうな顔をしているのか、自分でもはっきりとは分からなかったけれど、
なんとなく分かった。
人間だと眉間に皺がよっているとか、目を細めているとかだろうけど、何しろワカメだからいまいちわからない。
今思い返すと、よく分からない。
女の子はリボンの上を走っていた。
ずいぶんと大きなリボンだ。
リボンはうねっている。
その上を女の子が走っていた。
女の子はテーブルに置かれた水がとても嫌だった。
嫌に思っていた。
お母さんが置きっぱなしにするお水が嫌いだった。
嫌いなのだ。
なんでそんな所に置いておくの?
私がテーブルに当たってこぼれでもしたらどうするつもり?
私が届かない場所に置いてある水、ちょっとお母さんそれを飲んでから洗濯物ほしてよ。
私の中にそれらの感情が流れ込んできた。
不安。
思いっきり台所でも遊びたいのに、何かと色々な所を走りたいのに、そんな所に飲みかけを置いておかないで、お母さん。
でもお母さんは別のリボンの上に乗っている。
私が走っているリボンとは別のリボンの上を走っている。
だから、声が届かない。
ちょっとお母さん!
リボンは大きくうねって、洗濯物を干しているお母さんに声が届かない。
ああ、もうちょっと。
ロケットちょうだい。ロケットを鉛筆のでもいいわよ。
「お母さん、変なの、これ」
「ああ、それは、ロケット鉛筆っていうの」
「変だね」
「ううん、そうだね」
お母さん、ロケット鉛筆って、面白いね!
ちょっと、お母さん。
女の子はしかたなく鉛筆を絵に描くことにしたみたいだ。
ロケット鉛筆。お母さんの所までいけるロケット。
ロケット鉛筆を、色ペンで描いている女の子。

フランジェリムさんは一生懸命に女の子が描いている絵を水滴で出来ている虫眼鏡を使って見ている。
それで、持っている資料に目を通して…。
それで、また虫眼鏡で眺めて。
女の子が描いているロケット鉛筆を一生懸命に見つめる、フランジェリムさん。
「あのう、フランジェリムさん」
「なあに?」
「あのう、それはロケット鉛筆なんですが…」
「へ?ロケット?」
フランジェリムさんはハっとして、資料に目を通す。
「あ、え、と、これの事?」
資料には「ロけっとえんぴつ」と描いてあって、かなり下手なロケット鉛筆の絵があった。
「あ、はい、そうです」
「あら、そうなの。」
フランジェリムさんは指パッチンをした。
すると、うねる2本のリボンと女の事、お母さん、洗濯物の世界にすなが降ってきた。
砂は一箇所にそれとなく集まっていって、そこに輪を作った。
穴の向こうはまた別の世界のようだ。
フランジェリムさんと手を繋いで、その穴へと向かった。
でも、私だけいけなかった。
「あれ?あんた来れないの?」
「え、あ、はいそのようで」
「あんた、組み換えをするのよ」
「は?組み換え?」
「あああんだから、…そっか、んだからさ」
フランジェリムさんは困ったような顔をして、
「だから、ちょっとあんた感情と一回離れて」
「え?は?あの感情と」
「感情と離れて」
私は口だけ「カンジョウトハナレテ」と動かして、どうしようもなくゆれるリボンに流されていた。
「ああ、んもう。このままだともっと流されちゃう。っていうか、私かなり分かりやすく説明できたつもりなんだけど、感情から離れてって言っただけじゃだめなの?まじ分かりやすいかと思ったのに」
私は、台所の水が美しく日の光に反射しているのを見て、不覚にもちょっといいなとか思ってしまった。


綺麗。
白とピンクと水色とか、色々色色色色いろ色々色いろいろ色いろ色居ろ居ろここにいよう。


「ああ、ちょっと、あんたが捕まってどうすんの?」
私はフランジェリムさんに額を触られていた。
「あれ、私は、あの…」
「ちょっと、あんた、仕事してんのに、仕事される側になってどうすんの」
「へ?」
気づいたら、私とフランジェリムさんは誰の部屋だか知らないけれど、子供部屋みたいな所に二人して座っていた。
2人はなぜか糸で絡まっている。
赤と黄色と白とオレンジの糸で、それで、フランジェリムさんは私の額に手を当てていた。
私は訳が分からず、間の抜けたそんな声を出して、アヒル座りをしていた。
私、今何をしているんだっけ?
「仕事!」
「仕事かあ」
「んもう!帰るわよ!」
「え、仕事があるのにいいんですか」
「いいの、もう根本的に解決しておいたから!」
私は、フランジェリムさんに手を引かれて、靄のなかから出てきた。
それで、やっと、今仕事中だったということをしっかりと思い出せた。
意識がはっきりして、夢の中で私が、訳のわからない行動をしていた事を恥ずかしく思えてきた。
「すみませんでした!」
「いいのいいの」
フランジェリムさんは疲れた様子だった。
私は、あの女の子の夢の中で女の子を案内するどころか、私自身が女の事一緒に迷ってしまっていた。
この靄の中から出てきて、初めてそのことが分かった。
靄の中、つまり、あの女のこの夢の中にいるときは、そのことがわからなくなっていた。
リボンの上から、出ていけなくて、その後はよく覚えていない。
でも、私が仕事の邪魔をして、迷惑をかけてしまったという事ははっきりわかった。
そんな風に考えながら、私は体育座りをしながら、靄を眺めていた。
まだ、靄の中から帰って来ている先輩は誰もいない。
この部屋には今、私1人きりだ。1人霧だ。確かに私と、霧があるだけだ。ダジャレ…。
ガチャ!
フランジェリムさんが帰ってきた。
ドアから入ってきたのはフランジェリムさんと、所長だった。
「ごめんなさいね、私さっき強く当たっちゃったでしょ?」
「え、あの、」
「私さ、あんたの事、よく分からなくってさ」
「あの、私、どうなっていたんですか」
「あんた、あのリボンの波に流されて、光の国まで言ってたわよ」
「光の国?」
「ああ、えっと、凄く遠くに行ってたわよ、遠くに」
「そうなんですか。私、机の上のコップを見ていたんです、台所で。窓から光が差し込んでいて。そのコップに反射してて、それが綺麗だなあって思ってて」
「……それ女の子の記憶じゃないの?あんた、そんなの見れるの」
フランジェリムさんが、驚いたように言った。
「人間の夢の中に人間が入って行くんだから、見れたって不思議ないんじゃないの」
所長が言った。
続けて所長が
「そのとき動けなくなってたっしょ」
「あ、はい。動けませんでした動けないっていうか、見とれてて、ずっとそこに居たっていうか」
「そう、それなんだよ、その見とれてて動けないっていうのが、つまり、夢の国から帰って来られなくなっているってゆう事なんだ」

 私はそれで、思い出したことがあった。
小さい頃、小学生の時、たぶん3,4年生くらいの時の事。
下校中、
道路に交通標示があった。
私は、前方に知っている友達が2人いるのに気がついたので、そこまで走っていこうとした。
でも、そのとき、なぜか「その道路交通標示の柱にタッチしないといけない」という考えが浮かんできた。
なぜかは分からない。
とにもかくにも、私はそうするべきだと思った。
そうしないといけないと思えた。
だから、私はその柱をタッチしてから、友達の方へ行った。
でも、友達の所まで着く前に、私はまた「柱にタッチしないといけない」という気がした。
私は、そのまま友達の方へ行きたかったのだけれど、どうしても気になるので、戻った。
タッチして、また友達の所へ走って行くのだが、また気になって戻る…。
何度も繰り返した。
結局その友達2人は私の帰り道とは別の方向に曲がってしまった。
何度も柱に戻った時のむずむずした感じを私はこの年になっても覚えていた。
私は、「夢の国に帰れない」の意味が少し分かった気がした。
「そういうことなんですね」
「うむ、そういうことだ」



「迷うのは、ほとんど子どもなのよ。まあ、大人も夢は見るだろうし妄想もするだろうけど、最終的にはほとんどの人が自分でちゃんと帰れるの。
でも、子どもの場合は夢の世界に1度入ってしまうと、戻れなくなる事が多いのよね」
任務の途中でフランジェリムさんが話してくれた。
こんな話もしてくれた。
「人は夢の国へ行ったままでしばらく帰らないと、もとの世界には戻れなくなってしまう。
やがて、その人は初めから居なかった、という事になってしまうの。」
私はその話を聞いて、ギョっとした。
それと同時に、昔、こんな感じの「怖さ」を味わった事があったような気がした。
ブラックホールに入って、その後永遠に帰って来れないとか。
永遠に帰って来れない。
もう戻って来れない。
それは…とても怖い事だ。
そういう怖さは1度考えてしまうとなかなか頭から離れなかった。
大人になってからはそんな事を考える機会なんて微塵もなかったけど、小さい頃は何度か考えていた気がする。
夢の世界に行ってしまって、戻れなくなって、人間界では誰も心配してくれることも無くって、初めからいなかった事になる…。
でもフランジェリムは、よくある事よと、言った。
別に何もこわか無いわよって。
私はどう考えても怖いと思った。
「そうなんですか…」と私は納得できない感じで返事をした。
私が納得していないことをフランジェリムさんは読み取ったらしく、さらに話した。
「でもさあ、あんたはあっちにいる時より今の方が楽しいんじゃないの?
私はあんたが向こうに居たときの事は知らないけど今のあんたを見てるとそう思うよ」
確かにそうだ。
向こうにいるときより今の方が楽しい。
「まあ、そんなもんよ。そこにいた方が楽しいんなら、本人も満足だろうし、他の人だって手出ししようとは思わないんじゃないの?
いいじゃない、楽しければ」
そんなもんだろうか。
私はやっぱり府に落ちない感じがしていたままだった。
まあ、とにかく、そういう子どもが人間の世界と夢の世界の間に挟まれて動けなくなってしまったのを助けるために、この案内所があるという事か。
私は、自分がこれからそういう子どもの救世主になれるんだと思ってうれしく思った。

この職場の本当の名前は「迷い人案内所」というらしいが、ワカメの国では普通「迷い子案内所」と呼んでいるらしい。
所長が教えてくれた。

【所長の話】
これまた、所長は面白かった。
人間界から来て、この職場に入ったばかりの新米の私によく愚痴をしゃべってきた。
ふつう愚痴は面白くないものだけれど、グチっている内容が本当にどうしようもなくって、おかしくなってしまった。
実際に顔に出して笑うと良くないので心の中で笑うだけだったけど。
私のパートナーは ドグナ・ミラコ・ソランシェリムというワカメの国の住人だ。
かなり名前が変。
変だけど、変だから、すぐ覚えられた。
まあ、名前からしても分かるが、彼女は女の人だ。
正式に言うとワカメの国では男女は無いらしいが、なんとなく面白半分で、男女があるらしい。
面白半分て…。
遊びみたいなものだそうだ。
まあ、ワカメの国ではそんな感じで理解できないことがたくさんあった。
私が経験したことの中で人間の概念にちゃんと置き換えられる事はほんとにわずかしか無かった。
もしも置き換えるのであれば…という感じしか説明は出来ない。
フランシェリムは(私はこのソランシェリムという部分が音の感じが良かったので、彼女の事をそう呼んでいた。が彼女はなんでその長いところをいちいち呼ぶのかと言っていた)
私の仕事のパートナーとして、仕事の間は私とずっと一緒だった。
普通は助手なんていないのだけれど、私が人間で、ワカメ人より能力が圧倒的に低いのでこういう形を取らせてもらった。
所長がそうしてくれた。
初めは、何となく助手をやっていたけれど、後になって周りの同僚たちはだれも助手と仕事をしている様子がなかったので、所長が臨機応変に「助手」という立場を作ってくれたのだと
わかった。
私がいたほうが仕事の能率が下がるけれど、ソランシェリムさんは嫌な感じは出さないで居てくれた。
私にもそれは分かった。
フランジェリム以外のワカメの国の人には誰も助手なん付いていなかった。
私が1人では仕事が出来ないから、わざわざ「助手」という職をつくってくれたようだ。
その事について私は負い目を感じてはいたのだが、ソランジェリムもその他のワカメの国の人も誰もそのことが嫌なんて思っていないようだった。
それも当たり前みたいな感じでいた。
報告書の翻訳の事もそうだ。
フランジェリムが全部の報告書を書けばいいのに、私にも半分やらせた。
それでソランジェリムがそれを見ながら訳すのだ。
それでは完全に余計な手間になっている。
余分に時間もかかる。
にもかかわらず彼女はそれを当たり前のようにやってくれた。
本当に私が書いたものを訳してくれていた。
憶測で彼女が適当に内容を変えたりはしていないようだった。
私にここはこうしたほうが良いと、ちゃんとアドヴァイスしてくれたから。
それにしてもドラえもんのホンヤクコンニャクって、どんだけー。

まあ人のイメージの中に潜りこんでるんだからその中にホンヤクコンニャクがあってもそれはありえることなんだろうけど、
ホンヤクコンニャクはやっぱり貴重みたいで、特別に集めているのだそうだ。
また「迷い子案内所」ではない、特別な所で集めているらしい。
所長が私のためにそこから品を要請しているらしかった。
本当に私のために色々なことをしてくれた。
やっぱり人間とワカメ人じゃあ違うから…。
でも私が活躍できることもあった。
ワカメ人はどうすればいいか分からなくて、資料を眺め回している場面でも、人間なら誰でも「こうすればいいだろ」ということが良くあった。
人間にとっては当たり前の事でもワカメの国の人にとっては意味不明は多くあるみたいだった。
たとえばロケット鉛筆というものをさがした時があった。
なぜロケット鉛筆を探す必要があったのか私にもよく分からなかったのだが(ソランジェリムはわかっていたみたいだった。私にこうだから必要なのよと説明してくれたけれど、よく分からなかった)
とにかくロケット鉛筆が必要だった。
でもフランジェリムは目の前にロケット鉛筆があるというのに、困っていたので、私がこれだよと言ったのだ。
でも彼女はは?と言ったきりまた手元の資料を眺めはじめてしまった。
私は勝手にそのロケット鉛筆を持って夢を見ている主である女の子に渡してあげた。
そしたら女の子は夢から覚められたのだ。
フランジェリムは目を丸くしていた。
後で聞いてみたが、彼女はロケットの形をした鉛筆だと思っていたらしい。
確かにロケット鉛筆はロケットフォームはあまりしていないし、デザインもロケットッぽくはない。
中の芯が飛び出してくる!という点でロケットっぽいのだ。
そういう変なところで抜けている。
私は抜けていると感じるが、ワカメの国に住んでいるのだから分からなくても普通であろうが。

職場の皆とはうまくやっていけた。
フランジェリムも私も含めて、お昼には皆でランチに行ったりもした。
私は、そのときは本当のワカメの国の領域に入れてドキドキした。
レンガ造りでレトロな感じだった。

【夢の国に来た日】
初めてこっちに来た日の事、
おかしな動きをする変な物体、それはワカメだった。
私は朝、あの駐車場でワカメに引っ張られてこちらに来た。
グイと引っ張られた。
胸倉をグイっと引っ張られてそのまま
私の頭の中はグルグルと回った。
強引に引っ張られて回る私は抵抗などできなかった。
ましてやさっきまで駐車場で長い間突っ立っていたんだし。
私は引っ張られながら、このまま引っ張られ続けて、どこか遠くへいってしまう気がした。
そして、こんなに早いスピードで、まっすぐ行ってしまっては、帰り道が分からなくなるのではと思ってすごく不安に思った。
どこか遠くへ私は連れて行かれているんだと分かった。
そして直感的に、こんなに早いスピードでまっすぐに進んで行ってしまうのでは、簡単には帰って来られないと思った。
結果的にはそのとおりだった。
私はもう自分がグルグル回ってはいない事に気がついた。
そして自分の目に何かが映っている事にも気がついた。
私は目に気を送って、視覚を働かせ、目に映っているのが何なのかを確認しようとした。
映ったのは茶色だった。
茶色の木目の壁。
私は古目だと思われる木目の壁を見ている。
そして、私は、アヒル座りをしていた。
手を前についている。
「こんにちは」
誰かが私に挨拶をした。
私は何も考えずに、つぶやいた。
「こんにちは」
「これは、驚いた、本当に普通の人間だね」
「所長が連れて来いって、」
「うん。まあでも、何?ワカメの国にふつーの人間が来るのはかなり珍しいんじゃないかね」
「それはやっぱりそうでしょう。珍しい珍しい。」
私は、耳元でそんな声が流れているのを何となく聞いていた。
私はハっとした。
私が今聞いているのは何?
私が居るのは何処なの?
私は当たりを素早く見回した。
何処かの部屋だった。
壁は全て茶色の木製だった。
机が置いてあった。
机も木製だった。
誰も居ない。
ここは!
そう思って私は立ち上がった。
すると、目の前に…ワカメが2人…いた。
私はドキっとした。
こんな近くにワカメが2人、逃げないと…。
怖い。
でも、こんなに近くにいる。逃げ切れないだろう。
どうしよう……ワカメが2人?って?
そんなことを考えていたら、視界が急にはっきりした。
いままではぼやけていたみたいだ。
そこにははっきりと、ワカメが2人、居た。
ワカメが動いている?
ワカメが喋っている?
私は一体何処に居るの?
夢の世界なの?

―正解だ。此処(ここ)は夢の世界だ。
私は、其の日夢の世界と言うか、夢の国「若芽の国」に来てしまった。
普通は、マンガとか、アニメとかで、主人公がこういう変な所に1人っきりで来ると、
不安だなとか、これからどうなるんだろうとか、感じるのだと思う。
でも私の場合は寧ろ(むしろ)逆だった。
人間の世界に居るときよりも、ワカメの国にいる方が安心する。
よっぽど向こうが嫌いだったって事かな。
こっちに来てから、その事に気がついた。
向こうでの日々はあまりに単調過ぎたんだ、きっと。
ここにいる人たちのワイワイやっている所を見ていると、なんだか安心できた。
心からそう思った。
楽しかった。
体が崩れちゃったり、透明になっちゃったりしたけれど。
私が折角書いた報告書をホンヤクこんにゃくを使って訳してもらった。

「ここで迷うのは、大体は子どもなのよ。大人も夢は見るだろうし妄想もするだろうけど、最終的には自分でちゃんと帰れるの。でも子どもは夢の世界から人間界に戻れなくなることが多々
あるのよね」
任務の途中でフランジェリムさんが話してくれた。
その後でこんな事を話してくれた。
「人は夢の国へ行ったままでしばらく帰らないと、もとの人間界には戻れなくなってしまうの。
その人は初めから居なかった、という事になってしまうの。」
「それってとても怖いですね」
そのまま戻れなくなってしまうなんて、それに人間界では誰も心配してくれることも無くて、初めからいなかった事になるだなんて…。
でもフランジェリムは、よくあることよと言った。
別にこわか無いわよって。
でも、だからこそこの案内所があるという事か。
人間界に戻れるように案内してあげるんだ。
「でもそんな事言うけどさあ、あんた人間界にいる時より元気にやってるじゃない」
「私が人間界にいるときの事なんて知らないでしょ」って言ったら、
「知らないけどなんとなく分かるよ、今のあんたを見てると」って言われた。
でも確かにその通りだった。

この職場の本当の名前は「迷い人案内所」というらしいが、ワカメの国では誰もが「迷い子案内所」と呼んでいるらしい。
所長が教えてくれた。
これまた、所長は面白かった。
人間界から来て、この職場に入ったばかりの新米の私によく愚痴をしゃべってきた。
ふつう愚痴は面白くないものだけれど、グチっている内容が本当にどうしようもなくって、おかしくなってしまった。
実際に顔に出して笑うと良くないので心の中で笑うだけだったけど。
私のパートナーは ドグナ・ミラコ・フランシェリムというワカメの国の住人だ。
かなり名前が変。
変だけど、変だから、すぐ覚えられた。
まあ、名前からしても分かるが、彼女は女の人だ。
正式に言うとワカメの国では男女は無いらしいが、なんとなく面白半分で、男女があるらしい。
面白半分て…。
遊びみたいなものだそうだ。
まあ、ワカメの国ではそんな感じで理解できないことがたくさんあった。
私が経験したことの中で人間の概念にちゃんと置き換えられる事はほんとにわずかしか無かった。
もしも置き換えるのであれば…という感じしか説明は出来ない。
ソランシェリムは(私はこのソランシェリムという部分が音の感じが良かったので、彼女の事をそう呼んでいた。が彼女はなんでその長いところをいちいち呼ぶのかと言っていた)
私の仕事のパートナーとして、仕事の間は私とずっと一緒だった。
普通は助手なんていないのだけれど、私が人間で、ワカメ人より能力が圧倒的に低いのでこういう形を取らせてもらった。
所長がそうしてくれた。
初めは、何となく助手をやっていたけれど、後になって周りの同僚たちはだれも助手と仕事をしている様子がなかったので、所長が臨機応変に「助手」という立場を作ってくれたのだと
わかった。
私がいたほうが仕事の能率が下がるけれど、ソランシェリムさんは嫌な感じは出さないで居てくれた。
私にもそれは分かった。
ソランジェリム以外のワカメの国の人には誰も助手なん付いていなかった。
私が1人では仕事が出来ないから、わざわざ「助手」という職をつくってくれたようだ。
その事について私は負い目を感じてはいたのだが、ソランジェリムもその他のワカメの国の人も誰もそのことが嫌なんて思っていないようだった。
それも当たり前みたいな感じでいた。
報告書の翻訳の事もそうだ。
ソランジェリムが全部の報告書を書けばいいのに、私にも半分やらせた。
それでソランジェリムがそれを見ながら訳すのだ。
それでは完全に余計な手間になっている。
余分に時間もかかる。
にもかかわらず彼女はそれを当たり前のようにやってくれた。
本当に私が書いたものを訳してくれていた。
憶測で彼女が適当に内容を変えたりはしていないようだった。
私にここはこうしたほうが良いと、ちゃんとアドヴァイスしてくれたから。
それにしてもドラえもんのホンヤクコンニャクって、どんだけー。
まあ人のイメージの中に潜りこんでるんだからその中にホンヤクコンニャクがあってもそれはありえることなんだろうけど、
ホンヤクコンニャクはやっぱり貴重みたいで、特別に集めているのだそうだ。
また「迷い子案内所」ではない、特別な所で集めているらしい。
所長が私のためにそこから品を要請しているらしかった。
本当に私のために色々なことをしてくれた。
やっぱり人間とワカメ人じゃあ違うから…。
でも私が活躍できることもあった。
ワカメ人はどうすればいいか分からなくて、資料を眺め回している場面でも、人間なら誰でも「こうすればいいだろ」ということが良くあった。
人間にとっては当たり前の事でもワカメの国の人にとっては意味不明は多くあるみたいだった。
たとえばロケット鉛筆というものをさがした時があった。
なぜロケット鉛筆を探す必要があったのか私にもよく分からなかったのだが(ソランジェリムはわかっていたみたいだった。私にこうだから必要なのよと説明してくれたけれど、よく分からなかった)
とにかくロケット鉛筆が必要だった。
でもフランジェリムは目の前にロケット鉛筆があるというのに、困っていたので、私がこれだよと言ったのだ。
でも彼女はは?と言ったきりまた手元の資料を眺めはじめてしまった。
私は勝手にそのロケット鉛筆を持って夢を見ている主である女の子に渡してあげた。
そしたら女の子は夢から覚められたのだ。
フランジェリムは目を丸くしていた。
後で聞いてみたが、彼女はロケットの形をした鉛筆だと思っていたらしい。
確かにロケット鉛筆はロケットフォームはあまりしていないし、デザインもロケットッぽくはない。
中の芯が飛び出してくる!という点でロケットっぽいのだ。
そういう変なところで抜けている。
私は抜けていると感じるが、ワカメの国に住んでいるのだから分からなくても普通であろうが。

職場の皆とはうまくやっていけた。
お昼にはフランジェリムや、他の同僚と一緒にランチに行ったりもした。

一日の仕事が終わると、私は、あてがわれたアパートに帰った。
フランジェリムさんが一緒に帰ってくれた。
私は家に帰った。
私は眠ると、毎日夢を見た。
私が現実世界で働いている夢だ。
私は、いつものように働いているのだ。
一日に起きたことが、総まとめな感じで、寝ている間に展開される。
私は朝起きると、ああ、ここはワカメの国なのか…と毎日思った。
そして、良かったと感じた。
ねえ、あの頃のあたしと、今のあたし、どう違うかな。
私、やっぱりあの頃つまらなかった気がする。
そのときは淡々と日々をこなしていた。
でもそれは、淡々過ぎたのかもしれない。
仕事をして、家事をして、それで…。
あとは?
楽しいこともした…よ。
多分。
私って、そんなにつまらない女だったけ?
フランジェリムさんは気さくに声をかけてくれる。
仕事をのろのろとした出来ない私を待ってくれる。
でも、人間世界ではそんなことをやっていては、駄目だ。
会社勤めだったら、クビ。
会社はつぶれてしまう。
周りの人から駄目な人扱いされる。
だが、しかし、仕事、を一生懸命やればそれだけでいいのだろうか。
家事をこなせばいいのであろうか。
私は、もしや淡白過ぎたのではないか。


【黄泉の国篇】
 フランジェリムさんは本当に多くの事を教えてくれた。
普通に教師をしていては到底知り得なかった事をだ。
「ヨミの国ってどうしてヨミの国って言うか知ってる?」
フランジェリムさんは突然そんな事を私に尋ねて来た。
「え?知らないです。というよりヨミノクニという物自体あまり聞いたことが無いです。何なのですか」
「黄泉の国はね、夜の国であり闇の国でもある。古代人間は、太陽が沈むと、その太陽は夜の国である、黄泉の国
で過ごして、朝再び太陽が蘇るのだとそういう風に思っていたの。そういう人達が居たの。ここからは人間界でも知られていない事なのだけれど、
夕日が沈むとき、西の空は黄色っぽくなるでしょ?ヨミの国の「ヨミ」は感じで黄色い泉と書くの」
「黄に泉ですか」
「そう、おういずみと書いてヨミ。イズミのミとヨミのミが重なるでしょその人達はね、夕日が黄色に見えたの。
夕日って一日の終わりにあるでしょ?一日が終わってその後黄色い泉が西の空に溢れんばかりにまるで泉の様に太陽から出て来るの。
その黄色の後に夜になるから、太陽は何処へ行ったかって考えたときに、ああ、黄色い泉の国に行ったんだ!て気付く訳よ。
それで東から太陽が又昇ってきて、ああ、黄色い泉の国から帰ってきてくれたんだって思うの。だから黄泉の国」
「成る程。昔の人は、太陽が一日の終わりに、黄色い泉の中に入っていってしまうように見えたのね昔の人は電気が無いから昼間の方が大切。
だから太陽の光は大切であった。太陽が失くなっててしまう事はとても困ることで名残惜しいから、その後何処へ行ったかが気になるし、大問題だったのね」
私は推論を申した。
「よく分かったわね。その通りよ。さすが元教え師」
「オシエシではなくて、教師です」
「ああ、人間界ではそういう風に言うんだったわね」

またまた、今度は何事だろうか。随分いつもと雰囲気が違うでは無いか。いつもの通りに迷いご相談所に出勤したら、同僚のワカメさん達がザワ付いている。
何だろうと耳を澄まして聞いてみる。
「ダグダ王が来るってさ」
「え、私ダグダ王嫌い。っていうか、デ・ダナーン神族自体が嫌い。」
「私は好き。だってカッコいいし、頭いいし」
「まあ確かに魔法は上手いらしいからその点に関しては尊敬せざるを得ないけど、でも妙に気取っているって言うか
その感じが嫌い。というか苦手」
「気品があるとも言えるけどね。まあ、言葉なんてどうとでも言い換えられるからね」
「まあ、取り方に因るね」
…成る程…分からない。私には意味がほとんど分からなかった。
何者かがワカメの国に来るという事は分かった。
それから、その者は好き派と嫌い派に分かれるという事も分かった。
フランジェリムさんが何食わぬ顔で出勤してきた。
「おはよー」
「あのフランジェリムさん、何かがあるんですか、誰かワカメの国に来るって聞いたんですけど」
「あーそれか。ダグダ王の事でしょ」
「はい。そうです。そのダグ…ダ?の王様が来るって、小耳に挟んだんですけど」
「ダグダ王。あやつはなかなかの曲者でな。見た目良し雰囲気良し、おまけに魔法まで上手いと着たもんだ。完璧っちゅう訳よ」
フランジェリムさんは、歌舞伎役者風に言葉をキメた。
「わーそれはそれは、完璧人間ですね」
「人間ではないけど、神様だからね。神族、神様の族って書いて親族ね。アイルランド出身よ。アイルランドと言ったら随分日本から遠いけれど、偶々近くまで来たついでに
ワカメの国に寄ったのかね。」
そんな完璧はどこにでも居るもんだ。
私が人間界で教師をしていた時にもそういう生徒は大体学年に0.5人くらいは居たもんだ。
もう、人間界が昔の事がまるで小説で読んだ事のある心象風景の如きイメージとして脳内に収納されている。
あの日々は「リアル」だったのだろうか。今の方が「リアル」であるように思える。
まあ2学年に1人、完璧な人が居るのだ。
完璧だからと言って鼻が高くて嫌な感じと言う訳でもなく、教師受けも良いというまさに完全体!
そこまで来るともはや、人間として見る事が出来なくなる。
化け物的完璧人間。
そういう人が居る。
この場合、ダグダ王というのは神様らしいので、化け物的というか、ある意味化け物そのものである。
完璧で尚且つ鼻が高いちょっとむかつく人も居る。
まあ、色々な人が居るか学校生活が楽しくなるってもんだ。
脳内言葉遣いがフランジェリムさんの影響で歌舞伎っぽくなってしまっている…。
「でもね、」
フランジェリムさんが荷物を置いて、いつも通り仕事の準備をする為に棚の確認をし始めたときに
「表があれば、裏も有る。彼は貪欲で残酷よ」
そのとき何処からとも無く、ハープの音色が聞こえてきた………様な気がする。
これは空耳か?なんだか不思議な聞こえ方がする。
空耳か本当の音なのか、分からないくらい微かな音だった。
なぜこんなに騒がしい事務室でその音が聞こえているのだろうか?
微妙に頭の中で混乱している。
一体何処から来るのか、甚だ不明であった。
他のワカメさん達も同じ様に聞こえているらしい。
そのハープの音色に耳を澄まし始めた様で、事務室内が静かになった。
このハープの音色を聞いてしまったら、どうにかなってしまうとそう思わせる、
魅力的な音色であった。
ここは妖精の国の中である。
どんな不思議なことがあっても可笑しくない。
この音色を聞いてしまうと、記憶が無くなるとかなんとか不思議な事が起きるのではないか?
そう思わせる音色だった。
が、フランジェリムさんに何か特別な効果があるのかと聞いたら、そういうのは特に無いらしい。
うむ、素直にいい琴だ、あ、ううん。琴でなくて、ハープだ。
ハープの事を琴と脳内で思ってしまった事に寸分の恥ずかしさを覚えた。
一瞬変換して
「何か凄い上手なハープ」
私はフランジェリムさんに話しかけた。
「まあそうね。これがダグダ王のハープよ」
「これがダグダ王が演奏しているハープ」
「そうよ。」
「はーこれは…なるほどこれは完璧ですね。こんな上手いハープを弾けるだけで完璧ですよ」
「完璧だけど、やっぱり好き派と嫌い派に分かれるところよ」
「ねえ会いに行って見ませんか」
「えーダグダ王に?」
フランジェリムさん如何にも嫌だと言うような声と表情をした。
「フランジェリムさんは、ダグダ王嫌い派なんですか?」
「私は嫌い」
「そうですか」
私は、ワカメの国に来てからと言うもの少し元気で積極的になった気がする。
その時私が、フランジェリムさん無しで1人でダグダ王に会いに行こうだなんて思い立ったのはきっと、そのせいだったのだろう。
 その日仕事が終わって脳がとても疲れていた。
そんあ状態にも関わらず私はダグダ王に会いに行った。
夢の中を行ったり来たりする仕事なので、体は疲れないのだが頭が疲れるのだ。
糖が欠かせない。
商店が集まっている道で甘いお菓子を買って帰るのが常だ。
迷い子案内所から帰るときは頭の使い過ぎで頭が熱い。
ダグダ王が好きで、よく入る店があると、同僚に聞いたのだ。
その同僚はダグダファンだそうで色々知っていた。
聞いた所によると、そこのお店の鶏がらスープは、なかなか美味しいらしい。
ドンぴしゃりだった。
ワカメの国ではそれなりに有名な食べ物屋さんから出てくる所に出会ったのだ。
その周りに人集り(ひとだかり)ならぬワカメ集りが出来ていたので、
そこにダグダ王が居るのだと遠くからでもすぐ分かった。
ワカメ集りでなかなかダグダ王の姿が見えなかったが、ワカメの妖精達はは私よりも少しばかり背が低い事が幸いして
なんとか一瞬だがチラッとダグダ王の姿を見る事が出来た。
ダグダ王はイケメンなのかなと勝手に思っていたが、違った。
何だか腕が筋肉質で頑健な感じだった。その目はダグダ王見物も出来たし、新しいお店も知れたし今日はいい事が2つもあった。
その日ルンルン気分で眠った。
私はワカメの国に来て人間界で教師をしていたときより元気になっていた。

 私が、一度目にワカメの国へ行ったときの話。
ワカメの国では色々在(あ)った。
この話は色の中でも、銀の話だ。
水の中に在る「ワカメの国」の「迷い子案内所」で働いて居(い)るとき。
私は仕事で、例の青い霧の中から人間の頭の中に入っていた。
私は銀色の何かを見た。
「先輩?是(これ)なんだと思います?」
私はフランジェリム先輩に訊いて見(み)た。
「ん?何?」
先輩は暢気(のんき)な雰囲気で応(こた)えた。
振り向いて、私が指差す其の銀色の物体を見るや否(いな)や、フランジェリム先輩は
「離れてっ」
と怒鳴った。
私は余りの其の声の大きさに驚いて肩をビクっとさせただけだった。
こういう緊急事態に大声を行き成り(いきなり)口にされても、言われた方としては、吃驚(びっくり)するだけである。


私は取敢えず(とりあえず)、其の銀色の物体から離れた。
「先輩、恐いですよ。突然大声を出して」
「あれが何か知ってる?」
「え、知りません。銀色のプルプルした物」
この会話の流れだと、フランジェリムさんが私に其の銀色の物体の正体を教えてくれるのかと、私はてっきり其う思った。
然し(しかし)、違った。
「私も、知らないわ。」
ズコー。
知らないのかいっ!
今度は私が怒鳴りたく成(な)った。
怒鳴りたくなったと言うより、突っ込みたく成ったよ!


「兎に角(とにかく)あれは危険物よ!」
「そ、其うですか」
私は肩透かし感を感じながら先輩に相槌を打った。
「詳しくは、ディクドトリに聞いてね。」
「え?」
「私の弟。人間界のあれこれに詳しいから。私は一般的なワカメの民だから人間界の事はよく解(わか)らないの。
でも、私の弟の「ディクドトリ」通称「ディクッチャー」はワカメの国の民のくせに、頭が良いのよ。人間界のあれこれに詳しいから。人間であるアンタと話が合うと思うわ。」
「はい。でも、私フランジェリムさん以外の方と上手く話せるか自信無いです。」
「其(そ)う?じゃあ、私から聞いてあげるわ。仕事が終わったらね。」
夢の世界から抜け出せ無く成った子を夢の世界から現実の世界へ還してあげるという私達の仕事を終えてから、迷い子案内所の前でフランジェリムさんが携帯電話を取り出した。
…夢の世界にも携帯電話が有るんだ。
夢が壊れる。

 「あ、もしもし?ディクッチャー?あのさ、ちょっと聞きたい事が有るんだけど。
あれ、あのさ、何十年前に在った事件。銀の何とかって事件あるでしょ?…あそれそれ、銀の涙事件(ぎんのなみだじけん)。有難う。じゃ此れから帰るから。」
電話が終わった。
フランジェリムさんはコチラを向いて。
「聞いてた?「銀の涙事件」。人間界の人間の感情が銀の涙として表現されて、其れを魚が飲み込んでしまって。
其の魚を人間が食べて、人間が余りの感情の高さに、動け無く成ったり、震えが止まら無く成ったりした事件。あんたの年だと知ら無いか。」
え、っとその話って、何か聞いた事が有る様な気がする…。
「え、其の話って、「水俣病」の事ですか?」
「は?何其れ。知らない。人間界でどの様に呼称されているかは知ら無い。何?「みかんびょう」って呼ばれてるの?」
「違います。蜜柑病では無く、「みなまたびょう」です。」
「ふうん。」


「水俣病は有機水銀を原因とする神経系の慢性中毒症です。」
「そうなんだ。解らないけれど。其の事件が、恐らく私達ワカメの国の民の間で言われている「銀の涙事件」ね。
銀と言う色はね、感情の行き止まりの色。
月が銀色に光る事が頭の中に浮かんだら、其れは感情の行き止まりを表して居(い)るわ。
NeoMoon。
銀月。
溢れんばかりの感情の高まりの象徴で有る銀の涙を呑んで終ったら頭が可笑しく成るのも当然。
余りに強い感情は、他人の感情を可笑しくしてしまうわ。」
「つまり、中枢神経が可笑しく成ると言う事ね。」
私はフランジェリムさんの話を現実に即した表現で言い直して呟いた。
「え?何か言った?」
「いえ、何も。で、銀の涙事件はどの様な事件だったのですか?」
私は現実世界でのメチル水銀がどの様にワカメの国の民に影響したかが気に成った。
私だって一応、いえ、一応では無く、人間界に居た時は、中学校教師だったのだ。
理科担当だ。
フランジェリムさんは口が重そうに話し始めた。

「あの事件はね。本当に不思議な事件だったわ。
銀の涙はワカメの国の民には直接的には悪影響を与えない。
妖精は感情の高まりに拠って生まれる。
感情が詰まった、銀の涙は妖精を無き物にするとい言うよりも、寧ろ妖精を肯定する存在。
其の事件はちょうど、此(こ)の「迷い子案内所」で起きた事件。
迷い子案内をしていた当時の和布の民が、あ、其の頃は、ワカメの国は、「若布の国」では無くって、「和布の国」だったわね。
其の和布の国の民がいつも通りに仕事をして居たの。
そうしたら、其の対象の人間の頭の中が銀色に成って、其の対象の人の世界が全部銀色に染まった。
何も出来無く成って、其の和布(わかめ)は引き換えした。
そして、其の対象の頭の中では、仕事が出来無く成って仕舞った。
あぁ其の頃から、若布の民は人間の頭の中の便利な道具とか、便利な概念を拝借させて貰っていたわ。
今、は「ドラえもん」の秘密道具の記憶が様々な人の頭の中に存在しているから、其れを貰ったりしているわ。
大人に成る子供の頭から貰うのよ。
だって大人に成る人は「ドラえもん」の秘密道具の情報なんて記憶から消されていても問題ないでしょ?
人間の頭の中の物を貰っていたりしたのだけれど、其の銀色の世界では、情報を貰って拝借する事が出来なく成って仕舞ったの。
其の「銀色現象」は当時ちょくちょく起きていたわ。
 そして其の銀色の原因を突き止めたわ。
世界が銀色に成る瞬間を目撃した和布が出て来たの。
其の和布の証言に拠ると、世界が銀色に成る直前に、銀色の素敵が振っているという事が分かったの。
 人それぞれ見ている夢が違う。
全く、雰囲気が違う夢を見ている人でも、世界が銀色に成る前に銀色の水滴が振っている事が分かったわ。
後々(のちにち)、ワカメの国の大王の「千里眼」で、解った事は、其の銀色の水滴は、人間が発生させた物だという事。
当時の和布の国の王の感覚から物を言わせた場合、其の銀色の水滴は「涙」だと言う話だったの。」
なるほど。
つまり、この話から私が得る冪(べき)教訓は、
どんなに好き曲でも、その曲を鳴らしている楽器を食べては成ら無い、
どんなに好きな人でも、其の人を食べては行け無いと言う事…。
私は、久し振りに真剣に考えた。

【現実に戻る編】
ある日私は、
部長の部屋に用事があって、お邪魔した。
整然と綺麗に部屋は整理されていた。
でも、何だか入って左奥のコーナーが見えない。
本棚が天井近くまでくらいあって、左奥が隠されている。
いやに気になる。
デスクは真ん前にこちらを向く形で普通に置かれている。
私は、目をいくつかしばたかせて、考えを何度も持ち直した。

あまり、勝手な行動を人様の部屋ですべきではない。
いや人ではないワカメだ。
でも、気になる。
ちょっとくらいいいよ、きっと。
でも、普通に考えて駄目だろう。
でも、ここはあくまでワカメの国以前いた人の世界とは異なるのだ。

私は、この一連の考えを自分がしている事に驚いた。
私は、以前こんな人間ではなかった。
もっと堅い人間だったはず。
他人の、人様の部屋を勝手に詮索するなんて、ありえないとか考えるはずの性格だったのに…。
私、どうしちゃったの?
悪い事に手を染め様としてる…
ダタン
突然音がした。
私はビクッとした。
下げていた頭をあげて、前を見ると、部長がいた。
そして、ちょっとの間私と目を合わせて例の私の視界の左側へと消えた。
さっきから気になっている、その棚の後ろへ隠れてしまった。
私は?と思った、隠れて、それで?
部長の手が棚の後ろから現れて、手招きした。
私は、おなかの中心をひっぱられるように感じ、そして、のそりのそりと、足を踏み出した。
デスクの右側から回り込んで棚の後ろである所の左奥の角が、視界に入った!
そこには、部長と見覚えの有る光景が有った。
 部長の後ろ側の壁であるはずの所は、穴が開いていて、そうちょうど畳で言うと一畳分の壁がくりぬかれている様に見える。
今私がいる位置からすると、そのくりぬかれた壁の左側に本棚があるのだ。
壁の向こう側は、外のようだ。
ただの裏口であるようだ。
「あの部長…」
私は、部長は何も言わず外にでて、階段を降りていってしまった。
「え、」
私は着いていこうと、よく裏口に有り勝ちな、銀色の金属製の板で出来た踊り場へ出た。
そこに広がっていたのは、何だか見慣れた光景だった。
なんなんだろうこの見慣れた光景は、広い土地。
何をする場所?
あ、学校だ。
私がいたのは、私が以前勤めていた学校だった。
部長が階段の下にいて、こちらを見ている。
「早く降りてきなさい」
私はよく分からないまま降りた。
「あのう」
「君はこれで釈放だ。また以前務めていたこの高校へ就職という事だ」
「はい?」
私は今まで逮捕されていたのか?
そのつっこみはいれずに、部長に聞く。
「どういうことですか?」
「では…」と言い、部長は、いつの間にか持っていたのかストップウォッチらしきもののボタンを
ポチっと押した。
すると、風が私の背中を押した。
風は私の体の芯に何か魂を入れて通り過ぎた。
周りの草が揺れ、時間というものが流れ出したのを感じる。
「ハイ、それじゃあ」と言って
部長は私の肩をポンと叩き、階段をタンタンタンタンと軽快にあがっていってしまった。
それで、ドアを…バタン。
そこにあるのは本来横に開くはずのドアだが、洋風のドアがバタンと音をたてて閉まった。
それで、その部分が元の横開きのドアに戻った。
私は、呆然と立ち尽くした。
一体なんなのか…

「もうお昼だし、お昼ご飯を食べよう」と思い、職員室へ向かった。
一瞬の内に私は以前の生活に戻った。
生活の変わり目って結構単純に行われる事が多い。
其れこそ、紙一枚とかで。
高校入試何て本当に其う言うものだ。
 私は以前より少し柔らかい性格になった。
以前の様に仕事をいつも完璧に熟す(こなす)とか考えないで居られる様になった。
ワカメの国での、優しい人情(若布だから「ワカメ情」だけど)に触れる生活は私を本質的に変えた。
夫と緩やかなゆったりとした時間を過ごせる様に成った。
どうしても休む然(べき)時は、休める様になった。
例えば、余りにも疲れているとか夫が今日は仕事に行か無いで欲しいと言って来た時とか。
以前なら大丈夫!と仕事に行ったり、だらし無い!とか思って夫を振り払ったり。
夫は其れに応じて段々と調子が整って来た。
格言う(かくいう)私も調子が良く成って来た。
良く成ると言うより整って来た。

【再びワカメの国へ】
………
此れで私の物語は終わる筈だ。
しかし、
私は、また、ワカメの国に呼び出されてしまったらしい。
私は夫の病状が良い方向へ向いている事に些か希望を持ち始めていた。
此れなら又遣って行ける!
其う思居ながら私は自家用車を駐車場に置き、車から降りた。
其の時、何か匂いがした。
匂い。
何か嫌な事を思い出させる匂い。
何だろう。
其れを考えようと頭の中でシナプスからシナプスに情報が渡った其の瞬間、
時が止まった。
え、此れって…。
例の如く又体が動か無い。
あの時フランジェリムさんが現れた其の場所の草むら辺りにウネウネと空間が乱れた。
そして又、フランジェリムさんが現れた。
ああ、何て事、2回目。
いや、しかし、アレはフランジェリムさんか?
随分と表情が険しいが。
何か、「迷いご案内所」の引継ぎで問題があったのだろうか。
フランジェリムさんが此方に向かって来る。
「こんちくわ」
「こんちくわ」
こんちくわ?此れ又変な挨拶だ事。
「ごめんに、又呼び出す様な事になっちゃって」
「どうしたんですか?仕事の引継ぎで問題ですか?」
と言っても私が引き継ぐ様な仕事何て存在しないと思うけれど…。
いや、私が何か引き継げるほどの仕事をしたかというと、そんな事はなかった。
だから、そんな問題など起こりっこない。
思えば、フランジェリムさんに迷惑をかけてばかりだった。
「ううんと、引継ぎではないのだけれども、ちょっとこさ頼みたい事があるんだ」
「はい?何ですか」
内心私は嫌だった。
私は是から現実世界で頑張っていくのだ、希望も見えて来た所なのに。
しかし、お世話に成ったフランジェリムさんだ、そんなきっぱりぷっつり関係を終了何て出来っこ無い。
「此れ、此の紙を持ってお城に行って欲しいの」
私は何やら紙を渡された。
びしょ濡れだ。しかし、破れそうも無い。
魔法の紙だ。
海の中である、ワカメの国では此の魔法の紙は可也貴重な品だった。
私は、嬉しかった。
何故ならお城に行けるから。
私も女の子だ。
お城に其れなりの憧れを持っている。
私がワカメの国で仕事をして居る時も行く機会が無かったから行けなかった。
「分かりました」
私は一瞬にして、気持ちが裏返った。
行く気満々に成った。
「是から若布の国に向かうけれど、用意は良い?私はあんたと一緒に行けないけれど兎に角お城に行って来て女王様がどうしてもあんたに話したい事がある
んだって。ほら、あんた人間でしょ。ワカメの国では珍しいから其れを生かした仕事があるんだって、勿論短期のアルバイトだから。私は迷い子案内で凄く忙しいから」
「え、女王様からの仕事?どういう事ですか?」
私は女王様と聞いて少したじろいだ。
「兎に角行けば分かるから。じゃ」
「ちょまっ」
グッ
私は引き込まれた。
再び夢の国で有り妖精の国でもある、ワカメの国に。
あああ、全く、来てしまったからには仕方無い。
お城に行くか。
内心来てしまった事で後に引け無く成ったので、
この体が少し浮く感覚、ワカメの国にいた時の感覚だ。
陸地と違って一応水の中だから、少し体が軽くなったような感じがするのだ。
それから、肌が水に触れている感覚が少しだけある。
でも、おぼれない。呼吸は普通にできるのだ。
なぜだかよく分からないが、
辺りが暗い。
もう夜なのだろうか。
私は其の時の事を思い出した。
以下回想。
仕事に失敗する度にフランジェリムさんは、あんた、其んなに迷惑かけてすみませんとか言うんじゃないわよ。
あんたの国では、こう言う状況の時に発する言葉は「迷惑」という言葉しか存在しないのかしら。
もっと他に言い方があるんじゃないの?
私は決して怒られるような言葉はチョイスしなかったはずだが、なぜが言い方が気に障ったらしく怒られてしまった。
そんな事も有った。
私は、ワカメの国の電車に乗って、お城へ向かった。
お城が、役所でもあり、女王の住んでいる所でもあるのだ。
私は、テクテクと駅を降り城へ向かった。
城は高い所に建っていて、迷い後案内所からも見えた。
この町は城下町らしい。
この城下町がワカメの国の都市なのだそうだ。
私は、坂道を進んだ。
やっとこさ、城に着いた。
城へ付くと、門番のワカメがいた。
そのワカメが「入場許可証を」と言ってきた。
私は、フランジェリムさんにもらった入場許可証を手渡した。
係員は目を閉じ瞑想するように、紙を額にくっつけた。それから、額を変な紙の山に当てた。
それから、手にペンを持ち…突然手が素早く動いた。
書かれた文字は…読めない。でも、肯定か、否定かで言ったら、なんとなく肯定的な文字ではあった。
門番のワカメは目を開けて、
「ハイ、いいですよ」
と紙を私に渡した。
紙がさっきと違うものになっていた。
いつの間に紙に書いてある文字を修正液で消して、新しく地図を描いたのだろう。
そんな事をしているようには見えなかったけれど…。
とにかくその地図に書いてある、赤い・の所へ行けばいいらしい。
私は、でっかい門を通り過ぎて行った。
もう夜なので、あまり人がいなかった。
私は、廊下を曲がったり、階段を上ったりしながら、・の所へ向かった。
途中、宿直のワカメとあったり、残業で今から帰るワカメとすれ違ったりして、
こんばんはと挨拶を交わした。
私は、もう少しで・の所まで辿り着きそうな所までやってきた。
階段の最後の一段を上りきって、歩き始める。
長い廊下をテクテク。
前から誰かがやってきた。
少し、レースのついたドレスのような服を着たワカメが歩いてくる。
私は、もしやこの方が女王様なのではないかとそわそわしながら、歩いた。
何か話しかけてくるかな?ドキドキ。
「こんばんは」
わっ話しかけてきた!
「こんばんは」意外と落ち着いた声を出す私。
「今日は綺麗な夜空ですね」
「あ、そうですね」
その瞬間何かが起きた。
私にはそれが何なのか全くもってわからなかった。
でも、それまでの月夜が窓から入ってくる落ち着いた夜というその場の雰囲気がガラっと一変したのは分かった。
女王様が首を下げて下を向いている。
え、どうしたの?
私の体はザワっとした。
それから、床、壁が突然フニャフニャと動き出した。
そして、その熱い空気が上へ昇っていくようなフニャフニャとした所から、
何者かが出てきた。
それも1人ではない。私の後ろ、女王様の後ろ、私達を取り囲むようにして現れた。
へ?何?
私の心臓は今右手で左胸を触ったら、物凄く分かるだろうに、とてつもなく速くそして、嫌な感じに鼓動している。
そんな風に嫌な心臓の動きを体で感じ取っている間に、ズイズイとその何者かが姿現している。
全部で、6体。私は、どうすればよいかわからず、恐怖でその場に立っているしかなかった。
軽い、金縛りにかかっていた。
姿を現したのは、?…ワカメ?ではない。
似ているけれど、違うワカメより色黒だ。
何か黒いマントを被っている。
女王様が急に奇声を発し始めた。

「あギャーああああアアアアーぐぅうううーーーふんんんんん」
その6体の何者かに、私は取り押さえられた。
女王様は分けの分からない言葉を喋ったり、変な息を漏らしたり、変な声をあげたり、
一体、一体何なの?
私は、その6人にかくまわれるような形になった。
女王様は手を頭をかかえて、何かぶつぶつと唱え、突然首をガクッと落とした。
そして、突然女王様から光が発せられ始めた。
その一部始終を私はよく正体が分からない色黒のワカメに囲まれながら、かくまわれながら、
視た。
そして女王は…姿を消した。

【別れの日】
 「私、若芽さん達と一緒に迷い子、あ、ううん。迷い人案内所で働いて、感じた事が有るんです。
皆さん、結構感情で、仕事の効率さを低くして仕舞ったりし無いですよね。
人間界では有り得ません。
私と公は別別なのです。
一緒くたにする事は良く無い事だとします。
でも、仕事をする上で邪魔な人間の私を無理に仕事の中に入れてくれて。
私、嬉しかったです。
 仕事に感情を持ち込ま無い冪(べき)だと、以前の私は思って居(い)ました。
でも、其れは、必ずしもそうでは無いと、考えが変わりました。
私の夫は実は、鬱病に成って仕舞(しま)ったのです。
私は、あの日、若布の国に連れて来られた日、夫に家に居て欲しいと言われました。
でも、仕事をサボる訳には行か無いと思って、いつもの通りに仕事場で有る、中学校へ行きました。
其(そ)れは、私の過(あやま)ちでした。
私は自分自身の「夫の為に学校を休みたい」と言う気持ちを優先させる冪(べき)だったのです。
私は、自分自身で感じた「家に居たい」と言う感情を無き物にしたのです。
私は、「仕事を休んでは成ら無い」と言う、私以外の誰かの考えに取り憑(つ)かれて居(い)ました。
私は私の気持ちよりも私以外の誰が言ったのかも解ら無い人の気持ちを優先させたのです。
私は或(あ)の日仕事をサボタージュする冪(べき)だったのです。」
私は、若布の国に居(い)る間に考えて居(い)た事を迷い人案内所の所長に話した。
「あぁ、その通りだ。よく一人で其処(そこ)迄(まで)思いが至(いた)ったね。
上出来だ。
そうだ。
正解だ。
君が、或(あ)の日、中学校の駐車場で亜空間に入り込んで仕舞った理由は、
「有る感情」を「無いが代」にしたからだ。其処(そこ)に、我が迷い子案内所の優秀な魔法使い妖精「フランジェリム」がお迎えに上がったと言う訳だ。
よく、頑張ったね。知りもし無い異世界で。」
所長は優しい口調で最後の言葉を閉(し)めた。
「いいえ、所長、私は、若布の国に居る間中、不安だなんて思いませんでした。
思えませんでした。
だって、有無を言わさ無い安心感がずっと私を包んで居たから。」
「うん。其(そ)れなら良かった。君が「若布の国」に新たに付け加えた、「若布の国」の定義だよ。」
私は、和(にこ)やかな表情で、こう言った。
「さようなら」
所長は、こう言った。
「さようなら」

畑広美の物語は一旦終わり。



番外編
章名:ひろみエナジー

10年程後…


 そのような状況の中で私が出会った人物が「貝津浮世(28)」であった。彼女は、私の言葉に重さを加えてくれた。
私の言葉に具を入れてくれた。方法論に過ぎない私の言葉、現代の言葉に確固たる内容を入れてくれた。
「私の魔法使いに成って下さい!します」
私が貝塚種苗店から帰ろうとしていて、歩道を歩いていた。
すると貝塚種苗店オリジナルのエプロンを取り去った私服姿で、貝塚浮世は、私の方に駆け寄って来て、私に声をかけてきたのだった

 私は、とても真面目に生きて来た。真面目と言うよりも、正しく生きて来た(きた)。
正しさなんて物、現代においてよく分からない概念だけれども、私は私が思う「正しさ」を実行してきた。
してきたつもりではない。してきたのだ。着実に、確実に正確に。 
誤解されやすいのだが、正しく生きているからと言って、「変な事」「おかしな事」に出くわさない訳ではない。
大真面目に正しく生きてきても「おかしな現象」には出くわす。
普段から現象に対して、真正面から向き合うから「変な現象」に対しても、いつも通りに真正面から向き合うのだ。
私(畑広美)は、「私(貝塚浮世)の魔法使いに成って下さい!」と言う聞き慣れない、変な珍しいの言葉に対して、即答した。「わかりました。なりましょう」まさかの2つ返事で。更に今後の計画まで指定した。「では明日、再びお店に参りますね。」私はそう貝塚浮世に言った。ニコっと微笑んで、私はその日は自宅に帰った。

 実は、私は、彼女、貝塚浮世に対して、その世にも奇妙な会話の以前に、訝(いぶか)しく思った事があったのだ。
私は何の種を買おうか品物を見物(けんぶつ)しながら迷っていた。私は迷うことを楽しんでいた。横文字に言い直す(書き直す)のどあれば「ショッピングを楽しんでいた。」
その際、店員である、貝塚浮世の腕が、私の視界に入った。
その腕の肌が一瞬…否、二、三瞬間「緑色」に見えたのだ。
私がこれまでの人生で以前に経験した事の中に、その緑色の肌の腕は存在している。
しかし、其の記憶の断片が私の記憶の中に、単独で存在している。
一体どの様な出来事の後に、其の緑色の腕を見たのか。
解ら無い。一体全体どの様な経路を進めば、其の単独で存在している「記憶」に補足情報を伴う状態でaccess出来るのだろうか。私の記憶の其の緑色の肌はいつ見たのか。私は思い出す事を試みた。が、補足情報を思い出す事は不可能であった。此(こ)の記憶をより正確に思い出せれば、膨大な記憶を同時に得られる気がした。
そう。私は、ワカメの国での出来事の一部始終の記憶を削除されて居(い)た。フランジェリム・ミラコ・ペディグリン、ディクドトリ・ミラン・ペディグリン、和昆戦争…忘れさせられて居たのだった。一度成(な)らず二度迄(まで)も。

私は、とても真面目に生きて来た。
真面目と言うよりも、正しく生きて来た(きた)。
正しさなんて物、現代においてよく分からない概念だけれども、私は私が思う「正しさ」を実行してきた。
してきたつもりではない。
してきたのだ。
着実に、確実に正確に。 
誤解されやすいのだが、正しく生きているからと言って、「変な事」「おかしな事」に出くわさない訳ではない。
大真面目に正しく生きてきても「おかしな現象」には出くわす。
普段から現象に対して、真正面から向き合うから「変な現象」に対しても、いつも通りに真正面から向き合うのだ。
私(畑広美)は、「私(貝塚浮世)の魔法使いに成って下さい!」と言う聞き慣れない、変な珍しいの言葉に対して、即答した。
「わかりました。なりましょう」まさかの2つ返事で。更に今後の計画まで指定した。
「では明日、再びお店に参りますね。」私はそう貝塚浮世に言った。
ニコっと微笑んで、私はその日は自宅に帰った。
  1. 2012/09/10(月) 23:43:56|
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小説「若芽の国」_第8章_スカウトされた昆布_マコア・ペディグリン_まこあピノキオ


 私は出稼ぎに都市に行くことにした。
昆布の国の都市、妖精の国の中ではかなりお堅い妖精達が集まることで有名な、あの昆布の国の都市にいく。
私は、昆布の国の田舎で育った昆布の妖精マコア・ぺディグリン。
マコアが名前でぺディグリンが名字だ。
私はお母さん、お父さん、妹、弟の5張家族だ。
昆布の国では一人2人でなく、一枚二枚でなく、1張、2張と数える。

 やはり、恥ずかしながら故郷を離れるのはとても辛かった。
妹はイヤイヤと地面に横になってジタバタと地団太を踏んでいた。
海の中だから、土と言っても砂っぽい土だからフワフワッと砂が水中に舞って彼女の姿を消していた。
私は彼女がそうしたときになだめ化す役目を家族内で負っていたが、今日からはもうそのお勤めはあ終了である。
いつもの様には宥(なだ)めに行かない。そのままさよならだ。
暫(しばら)くだから…暫くしたら、休みには帰って来るから。
そう我が妹に向けて心の中で密かに呟(つぶや)いた。
弟は意外と駄々を捏(こ)ねず、口を踏ん張って下の方を剥いてお母さんと手を繋いでじっとしている。
じゃあ行ってきます。
私は言って、サッと振り向き家を後にした。
駅に着く迄(まで)私は一度も振り向か無(な)かったそうでないと自分の心が緩(ゆる)んでしまう気がした。
一度緩んだ気持ちをもう一度自分自身で締めなおすのはとても辛い。
列車に乗るまで頑張って、乗車してから窓を見て見慣れた(駅周りはそこまで見慣れてもいないが…)我(わ)が故郷を振り返った。
もう列車に乗ってしまっているから、心がどんなに緩んでもこの列車は都に行くまでは止まる事は無い。
汽車に乗って私はコンブの国の都市へ行った。

 都に着いて私は、おばさんに誘われた会計事務所に向かっていた。
一応私は、昆布の国の学校を出ているので計算が出来る。
だから知り合いのあばさんの会計事務所に就職する事になった。
妖精としては最低の職業だ。
妖精は、想像上の生き物だ。
其の想像の産物が、理的に計算をするだなんて…。
其れはもう屈辱以外の何物でも有る。
屈辱と、敗北感。
妖精が計算をすると言う事は、アイデンティティを自ら深く傷付ける事と等しいので有(あ)る。
妖精はイマジネーションで無(な)く数学の世界に生きるなんて屈辱的だ。
昆布の国の妖精は頭が堅い故(ゆえ)、「アイデンティティが崩れても其れでも存在し続ける事。其れが、
大人への登竜門だ!」と皆言う。
妖精は大人には成ら無いのにね。
頭が堅いって、可笑しいよね。
 しかし、そんな事を言ったって、思ったって、其(そ)れでも貧しい家族が居る事だし、一応私は家族が好きなのだ。
だから家族のため…というと押し付けがましいが、事実それもあって都へ遣って来た。

 駅を降りて、魔法で潤(ふや)けない様になっている紙に書かれた、滲(にじ)まない様になっているインクで書かれた地図を見た。
母から貰った地図だ。母が母の知り合いの人から教わって描いてくれた。
母はとても元気で、現金な人だ。
しかし、典型的なコンブの妖精でカナリ堅い性格である。
色々と煩(うるさ)いのである。
あの年で口煩いとなるとおばあちゃんになったらきっと口が裂けてしまうに違いない。
それくらい、今も口うるさいのだ。
しかしながらその母とも別れてこれからは1人で暮らしていかなくてはいけない。
正確には1人ではなく、ルームシェアだ。
妖精同士のルームシェアはかなり過酷とされている。
妖精は基本的に性格が濃く、ぶつかったときに両者が引かないから、大変な事になるのだ。
でも、私はルームシェアでやっていく。

 理由は…金が無いから。
ただそれだけ。
私は地図から顔を上げて前方に広がる道を見据え。
これからお世話になる、会計事務所の所まで歩き始めた。
まずは事務所から訪ねて、その後寮に行く予定である。。
知っている人が近くに一張も居ないのはとても心細かった。
結構暗くてよく分からないお店が並び立つ場所に来てしまった。
この通りはやけに暗い。日が当たりにくいようだ。
と、その時6メートル程向こう側に水中にプカプカと浮いて移動するコンブが居た。
黒ずくめでなんだか怪しいし怖い。
コンブの国は海の中にあるので、水中を泳いでも街中を移動できる。
でも、真面目なコンブは地を這いずって歩く。
不真面目なコンブ(特にヤクザ)とか、急ぎの警察とかはたまに水中をプカプカと泳ぎながら移動することもある。

 歩いていた。
すると、いや~な感じのお兄ちゃん達が2張こちらへやってきた。
私はそれとなく避けて行こうとしたのだが、その2張は私と同じ方向へふらふらっと来るのだ。
あ、もしかして…私に近づいているのではないだろうな、何となくそう思った。
お兄ちゃん達は私の目の前に来て、話しかけてきた。
「よお、よお、こんばんは。こんな時間にどういう御用です?」
ああ、やっぱり、なんか嫌な予感がしたのだ。
「これから、仕事がありますので」
「何の仕事?ちょっといいかな来て貰って」
「あの、急ぎますので」
私は2張の脇を押し通ろうとしたのだが、2張が立ちふさがった。
「ちょっと!」
「君は才能がある」
「占い師の才能がある。」
私は兎に角前に前に進もうと思ったのだが、その2張は私を邪魔した。
「私達に着いて来るととてもいい事があるよ」
私は別の道から事務所へ向かおうとして、振り返って逆の方向へ向かった。
するとその2張は私を強引に拘束し始めた。
気がつくと周りにはもうコンブは居なくなっていた。
もう夜遅くだから、皆お家に帰っているのだ。
コンブの国の民は真面目だから夜遊びはしない。
しかし、一体こいつ等は何なんだ。
私は可也(かなり)ヤバイ状況に陥っていると私自身ヒシヒシと感じ取っていた。
2張は物理力魔法まで使っているから、私なんか全く抵抗出来なかった。

…洗濯物を干さないと…。
ああ、お金が無くて大変なんだ。
じゃあ私が出稼ぎに行かないと…。
あれ?電車に乗って、もう上京してきたんだ!
もう故郷は旅立ったんだ!家族ともさよならをした!
でも、私今何しているの?
電車から降りて、それでその後事務所に行って…アレ?事務所に行ったときの記憶が無い。
それ迄の間に何か…。
あ!あの2張!そいつ等に…捕まった!?
今私は、そいつ等に捕まって、それで?
あれ体が動かない。目も開かない?

 徐々に記憶が戻ってきて、今の状況を何とか把握しようと必死になって頭の中をぐるぐる回した。
つまり、整理すると私訳の分からないコンブ達に拉致されたという事だ。
それって最悪の状況ジャン。
もしかしてこのまま殺される?
そんな筈無いよね。
でも、あの物理的力を生み出す難しい魔法を使えるという事はもしかすると、
妖精一匹殺すくらい造作も無いことなのかもしれない。
そう思って、急に怖くなってきた。
「何なの!ここは一体何なの!?」
私叫んだ。水の中だからエコーロケーションによる部屋の広さの確認は出来ない。
音は全て水に吸収されてしまう。
私はバタバタと身体を動かした。大して動け無い。縛られている様だ。

 おっ何か来た様だ。さっきの2張か?
水の流れが微妙に変わったので、何物かが近寄って来ているのが分かる。
殺気は感じられない。
私を殺すつもりは無い様だ。
私は少々安心して、弩突いた。
「ちょっとあんたら、私をこんな目に合わせてどういう撥が当たるか分かってるんでしょうね。
私は不安の中で上京して来た、か弱い若者妖精なのよ!」

「おい、おい、そんな事言ってていいのか?お前は囚われの身なんだぞ」
私にはそのコンブが張ったりで其れを言っているのだと判った。
何となく判った。
でも、取り合えず静かにする。
「…」
「大人しくしろ!」
私は内心笑った。
そんな無理しちゃって…。
後から思えば、その他人の心が手に取るように感じられるその事自体が私の魔力の高さであった。
そして、もう1張のコンブは言った。
「これからお前を脱がせる!」
私は、その言葉を聞いてビックリした。
「えっ」
私ともう片方の一張のコンブが同時に言った。
「あ、違うお前の拘束を解く!」
彼は自分が言った言葉の意味が分かったらしく、顔を黒らめた。
「馬鹿か!お前は!」
脱がせるって、正かそんな事。
言葉の言い間違えには注意して欲しい。

 そんな下らない事等今はどうでも良いのだ。
とにかく、私は事務所に行かなくてはならない。
で無ければ私の就職は取り消しに成ってしまうかも知れない。
いくら知り合いと言っても、初日から約束を破ってしまうのはヤバイ。
ただでさえコンブの妖精は固いのだ。

「ココから出して!私を出して!あんた等が本当は私をどうのこうのするつもりが無いのは分かってんの!」
「やはり、そうか。そうだと思った。あんたは魔力が備わっている」
何かが別のコンブの声だ。
別の何かこの部屋に入ってきた。
今までの2張の声と違う、別の声がする。
「おい、拘束魔法を解いてやれ」
「うぇい」
2張のコンブが応えた。
変にイカにも「手下です」みたいな感じで応えているのが私には少し、笑えた。
この2張はそんな性格では絶対に無い。

「お前か、魔力が強いという田舎娘は」
「は?私はただの田舎娘です!」
何を変な事を言っているのやら。
「ん?」
そのちょっと変わったコンブが私を覗き込んできた。
そのコンブは、何だかヨーロッパ貴族みたいな服装をしている。
ダサい。
基本的にコンブの国の妖精はダサい。
私もだが…。

「お主私たちの心を読めるのだな」
「は?」
「お前は私達に大きな悪意が無い事をもう見抜いている」
何を言っているんだ此の変な格好のコンブは。
「御前はこいつ等2張が御前を縛り付ける事はしても、殺す積もり(つもり)が無い事を察知している!だからそうやって強気に振舞えるのだ!」
変な格好の彼はそう怒る様に、又、探偵が犯人を言い当てるかの様に言った。
そんな突然怒鳴られても困る…。
大体、私は何も悪い事はして居無い(いない)。

…まあ、何と無く、其れは…其の通りだ。
私は、彼らに悪意が無い事を感じ取っていた。
確信していたと言っても良い。
其の通りだが、其れが
「だから何だって言うの?」
私は、喧嘩腰に言った。
其れも其の筈私は無理に捕まえられて、何も悪い事をして居無いのに、訳の分からない状況の中に居させられているのだ。
知らない部屋に入れられて居るのだ。
そしたらダサい格好の奴はコウ言った。
「だから、御前には強力な魔力が備わって居ると言っているのだ。」


私は、其の日、自分に魔力が備わっている事を教えられた。
それからと言う物、特訓の日々が始まった。
しかし、私は其れ程苦労する事も無く、一人前の其れも一流のいや、超一流の占い師になった。
私には、妖精や人を占う力が大きいらしく、未来の事も分かった。
私は、終に(ついに)占い師の中で最も位が高い、国家専属の占い師になった。
実は、あの日スカウトされて拘束された日のダサい格好をしていた昆布は国の内閣で有る五閣(五閣僚)別名トップ五張集の一張だった。
名前は、ミロク。
可也(かなり)強力な魔術師だ。

 コンブの国の妖精達は一般には知らないが、五閣僚のミロクはマコミットの会員だ。
大体、マコミットとコンブの国が関わっている事を知らない。
私は、政界の裏を知れた気がして嬉しかった。
其れがヤバイ事に発展するなんて事を知らずに。
 私のマコミットでの生活は順風満帆だった。
他の占い師見習いを追い越して、飛び級の飛び級でどんどんと上に上がった。
勿論、私の母の知り合いのおばさんの事務所にも勤めている。
昼間は事務所で妖精界で最も侮辱的な仕事をして、夜はマコミットの占い師の金の卵として、
修行する。此のギャップに私は私自身に酔っていた。
自己陶酔していた。

 私は何時の間にか(いつのまにか)政府のトップに迄上り詰めていた。
本当に気が付いたら沿う為っていた。
まさかただの田舎に住んでいる妖精がコンブの国のトップに成るなんて、
以前の私が考えたらえ!ありえないとか、そんな風にしか思わなかった。
でも、成ってしまってからは何の違和感も無く私は、毎日忙しく占いの仕事をしていた。
もはや私が有名な占い師で有ると言う事は事務所の、母知り合いのおばさんにも知れてしまい、
会計事務のおばさんは御母さんに言わないで置(お)いて下さいと頼んだ。
「マコアちゃん?別に黙って上げてもいいわよ?金の卵のマコアちゃんの頼みだから御母さんには言わない
で置いてあげる。」
会計事務のおばさんは私が有名に成る事にワクワクしている様だった。
昆布の国の妖精は皆お堅い所以(から)普通、働く予定だった職場を変えて、別の職業に就くなんて
許される行為では無い。
が!
占い師と言う職業は特別なのだ。
占い師は羨望の目で見られる。
羨望の目で見られるという事は詰(つ)まり、羨ましいと思われる事だ。
私は、会計事務の従業員に嫌味を言われた。
「新人で、期待の星のマコアちゃん。素晴らしいわね。羨ましい限りだわ。
ところで、ぺディグリンと言う苗字、人間界に「犬」の餌(えさ)の名前でぺディグリーと言う
名前が有るらしいわね。何か関係でも有るのかしら。」
何の心算(つもり)なのかいまいち言われた時は良く分から無かった。
後で良く考えたら、その言葉が「嫌味」だと分かった。
犬の餌と同じ苗字だなんて。
人間界の犬の餌の名前なんて人間界との行き来が盛んで無い現代に置(お)いて普通知れる筈(はず)
も無い。
きっとその昆布は私に何とか嫌味を言おうと思って、頑張って人間界の事について調べて
何とか私に言える嫌味の文句を探し当てたのに違い無い。
私は、占い師専門になった。


 母には此の事は伝えていない。
所以(だから)母は今でも私が会計事務所で働いて居ると思っている。
テレビの露出は控えた。
妖精の国のテレビは、誰の元に其の番組を届けるか出演者が決められるので、
私は、母の住んでいる地域には流さないでくれと妖精の世界のテレビ局のコンブに頼んでおいた。
テレビに出る位(くらい)私は有名で有能な占い師になった。

 まあ、何て言うか簡単に言ってしまうと、天狗に成っていた。
天狗は神道の一部だ。
真面目な人の集う、神道。
コンブの国では、真面目な妖精が多いが、しかし真面目である分いい気に成った時の踏ん反り返り振りは目に見張る物が有る。
私も結局は其の一部だったのだ。
コンブで有るが故の真面目さと、いい気に成った時の偉がりっぷりを持ち合わせていた。
やはり私はコンブの妖精だった。
隣国のワカメの国の妖精とは違って、昆布の国の民はお堅い。

 私は、妖精で有りながら天狗にも成っていた。
コンブの姿をした天狗何て見た事も聞いた事も触った事も匂いを嗅いだ事も無かろう。
ああ、ああ、沿うだろう。
私も自分の鏡の姿を見た時に驚いた。
今日も一仕事終えてと、或る日チョビット時間が出来た。
いつも、占いの申し込み者の占いで大忙しなのだ。
でも、其の日は何故か少し時間が出来た。
其仕て、ふといつも被って居る、顔を覆い隠す真紅の黄色い飾りが付いた布を捲って(捲って)鏡を見た。
すると、其処に居たのはコンブの姿をした鼻の長い天狗だった。
丸でカリントウの如く、其の鼻を私の顔にくっ付いていた。
若しかして取れるのでは無いかと思って手で少し力を入れて外そうとした位だ。
外れる筈も無い。

 私は心が完全に病んでいた。
心が病むと言うのは自分でも分かっているのに、其れでも尚且つ病んでしまう物である。
自分が心が病んでしまうから、そっちに行かない様にと努力しなければならない。
私は、其れに気付かずに悪い方へと流されてしまった。
私は悪魔に取り付かれていた。
私ばかりでなく、私の周りの人も取り付かれていた。
コンブの国全体が悪魔に取り付かれていた。
  1. 2012/09/10(月) 23:40:52|
  2. ワカメの国
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